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信仰する者たちよ、アッラー*とその使徒*の前で、出しゃばってはならない¹。そしてアッラー*を畏れ*よ。本当にアッラー*は、よくお聞きになるお方、全知者であられる。
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1 アッラー*とその使徒*を差しおいて、宗教に関わる物事を勝手に決めたりしてはならない、ということ(ムヤッサル515頁参照)。
信仰する者たちよ、預言者*の声の上に、あなた方の声を張り上げてはならない。また、自分たちが互いに大声を上げるように、彼(預言者*)に対して大声で物言いをしてはならない。(それは)あなた方が気付かない内に、あなた方の行いが台無しになってしまわないように、である。
本当にアッラー*の使徒*のもとで声を低める者たちこそは、アッラー*がその心を敬虔さ*へとお試しにな(り、そこへと導いて下さ)った者たちなのだ。彼らにこそ、(罪の)お赦しと偉大な褒美がある。
本当に(預言者*よ)、あなたを部屋の向こうから(大声で)呼ぶ者たち、その大半は弁えることがない。¹
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1 一説にこのアーヤ*は、マディーナ*にやって来たベドウィンたちが、預言者*の部屋の外から「ムハンマド*!ムハンマド*!」と呼んだことに関して下った(アッ=サァディー799頁参照) 。
そして、もし彼らが、彼(預言者*)が出てくるまで我慢していたら、彼らにとってもっと善いことだったのだ。アッラー*は赦し深いお方、慈愛深い*お方であられる。
信仰する者たちよ、もしあなた方のもとに放逸な者が何らかの消息を携えてやって来たら、(それを信用する前に、その真偽を)確認せよ¹。あなた方が、ある民に無知から被害を及ぼし、それであなた方が自分たちがしたことゆえ、悔やむ者とならないように。²
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1 ここでの「放逸」さの意味には、「噓つき」「自分の罪を公(おおや)けにする者」「アッラー*に対して羞恥(しゅうち)心を抱かない者」といった諸説がある。尚、放逸であることが確定した者の情報・伝承は、例外的なものを除いては受け入れられないということで、学者間の見解は一致している(アル=クルトゥビー16:312参照)。 2 このアーヤ*は、ワリード・ブン・ウクバが浄財*の徴収(ちょうしゅう)のため、ムスタラク族へ遣わされた際の出来事に関して下ったとされる。ムスタラク族が浄財を渡すことを拒んだというワリードの誤った報告により、ムスリムたちは危うく彼らを攻撃しそうになった(アフマド18459参照)。
そして知るのだ、あなた方の間には(あなた方の福利を知り、あなた方に善を望む)アッラー*の使徒*がいる、ということを。もし、彼が物事を多くにおいてあなた方に従えば、あなた方は苦境に陥ったであろう。しかしアッラー*は、あなた方に信仰を愛させ給い、それをあなた方の心に目映いものとされた。そして、あなた方に不信仰と放逸さと(アッラー*への)反抗を嫌わせ給うたのである。それらの者たちこそは、正しく導かれた者たちなのだ。
アッラー*からのご恩寵と、恩恵ゆえ。アッラー*は全知者、英知あふれる*お方である。
もし、信仰者たちからなる二派が戦い合ったなら、(信仰者たちよ、)彼らの間を取り持て¹。そして、もしその一方が(呼びかけに応じずに、)他方を侵犯したのであれば、侵犯する方に対し、彼らがアッラー*のご命令²に立ち返るまで戦え。それで(その一派が、アッラー*のご命令に)立ち返ったなら、彼ら二派の間を正義で取り持ち、公正に(裁決)するのだ。本当にアッラー*は、公正にする者たちをお好みになるのだから。
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1 アッラー*とその使徒*の裁決へと招き、その裁決に満足させよ、ということ(ムヤッサル516頁参照)。 2 「アッラー*のご命令」とは、アッラー*とその使徒*の裁決のこと(前掲書、同頁参照)。
本当に信仰者たちは、(宗教における)同胞なのである。ならば、あなた方の同胞を取り持つがよい。そしてあなた方が慈しまれるよう、アッラー*を畏れる*のだ。
信仰する者たちよ、ある民が別の民を馬鹿にしてはならない。(馬鹿にされた)彼らの方が、(馬鹿にした)彼らより優れているかもしれないのだから。また、ある女性たちが、別の女性たちを馬鹿にしてはならない。(馬鹿にされた)彼女らの方が、(馬鹿にした)彼女らより優れているかもしれないのだから¹。また、あなた方自身²を中傷したり、(本人が嫌がる)あだ名で呼び合ったりしてはならない。信仰(に入った)後に放逸さで呼ばれることの、何と醜悪なことか³。そして(これらの悪事から)悔悟しない者こそは、不正*者なのである。
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1 人間が真に徳とすべきことは、大方の場合において嘲笑(ちょうしょう)の対象となる姿形、地位、状況といった表面的なものではなく、心の中に秘められた内面的なものである。ゆえに人は、もしかするとアッラー*の御許では自分よりも徳の高い者であるかもしれない他人を、無闇(むやみ)に蔑(さげす)むべきではない。そうすれば彼は、アッラー*の御許で高い地位にある者を蔑むことにより、自分自身を害することになるからだ(アブー・アッ=スウード8:121参照)。預言者*は、こう仰(おっしゃ)っている。「本当にアッラー*は、あなた方の姿や財産をご覧になるのではない。しかし、あなた方の心と行いをご覧になるのである。」(ムスリム「善行と血縁の絆と礼儀作法の書」34参照) 2 他人が「あなた方自身」と表現されているのは、「同胞を中傷した者は、自分自身を中傷したも同様」で、「他人を中傷する者は、大抵、自分自身も相手から中傷されるから」(アッ=ラーズイー10:109参照)。 3 信仰に入った後に、これらの罪を犯す者は「放逸な者」である(アル=カースィミー15:5461参照)。
信仰する者たちよ、憶測の多くを避けよ。実にある種の憶測¹は、罪なのだから。また、(同胞のぼろを)詮索したり、互いに陰口²を言ったりしてはならない。一体、あなた方の誰が、死んだ同胞の肉を食べたいというのか?³あなた方は、それを忌み嫌うであろう。アッラー*を畏れ*よ。本当にアッラー*は、よく悔悟をお受け入れになる*お方、慈愛深い*お方なのだ。
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1 同胞に対する悪い「憶測」のこと(ムヤッサル517頁参照)。 2 イスラーム*における「陰口(ギーバ)」とは、その内容が真実であったとしても、陰で「自分の同胞について、彼が嫌に思うことを話すこと」である(ムスリム「善行と血縁の絆と礼儀作法の書70参照)。 3 人の尊厳を傷つけ、人を覆(おお)い隠している尊厳を奪(うば)い去り、反論できない状態で攻撃することが、人の肉体そのものをバラバラにし、身体の要(かなめ)である骨を露出させ、死体に対して口でなぶるという、忌まわしい行為に例えられている(アル=ビカーイ7:361参照)。
人々よ、本当にわれら*は、あなた方を一人の男性と一人の女性から創り¹、あなた方が知り合うべく、あなた方をいくつもの民族や部族とした。実にあなた方の内、アッラー*の御許で最も高貴な者とは、最も敬虔*な者なのである。アッラー*こそは全知者、通暁されるお方。
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1 全人類はアーダム*とハウワーゥ*という同一の祖先を有し、かつ男性と女性を介して生まれる(アッ=サァディー802頁参照)。
ベドウィンたち¹は言った。「私たちは、(アッラー*とその使徒*を)信仰した」。(預言者*よ、彼らに)言ってやれ。「あなた方は、まだ信仰してはいない。しかし、『服従した』と言うのだ。信仰はまだ、あなた方の心の中には入っていない²。そして、もしあなた方がアッラー*とその使徒*に従えば、かれはあなた方の行い(の褒美)から、何一つ差し引きされることはない。本当にアッラー*は、赦し深いお方、慈愛深い*お方なのだから」。
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1 ここで言及されているのは、信念に満ちた心、純粋な意図、安心感を伴(ともな)う正しい信仰ではなく、殺害や捕虜(ほりょ)となることへの恐怖や、施(ほどこ)しを得ることへの願望などが理由でイスラーム*を受け入れた、ある種のベドウィンたちのこと(アッ=シャウカーニー5:90参照)。 2 一説に、このアーヤ*で言及されている「信仰」とは、「心による信念、言葉による承認、身体による行為によって服従すること」。であり、「服従」とは「信念はなくても、言葉による承認と、身体による行為によって、表面的に服従すること」。この場合、このベドウィンたちは偽(にせ)信者*となる。別説によれば、ここでの「信仰」は、「完全なる信仰心」のこと。この場合、彼らには信仰心が存在することになる(アッ=シャンキーティー7:419-420参照)。
本当に信仰とは、アッラー*とその使徒*を信じ、その後(信仰において)疑惑を抱かず、アッラー*の道において自らの財産と生命をかけて努力奮闘する者たちのこと。それらの者たちこそは、(自分たちの信仰に対する)正直者である。
(預言者*よ、彼らベドウィンたちに)言ってやれ。「一体、あなた方はアッラー*に、自分たちの宗教(の度合い)について知らせるというのか?アッラー*は諸天にあるもの、大地にあるものをご存知であり、アッラー*は全てのことをご存知のお方だというのに?」¹
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1 彼らの「自分たちは信仰者だ」という主張は、全知者であるアッラー*に対する無作法か、あるいはその言葉によって現世的な利益を意図しているかのどちらかである(アッ=サァディー802頁参照)。
(預言者*よ、)彼ら(ベドウィンたち)は自分たちが服従(イスラーム*)¹したことで、あなたに恩を着せる。言ってやれ。「あなた方の服従に関し、私に恩を着せるのではない。いや、アッラー*があなた方を(、あなた方が主張している)信仰へとお導きになったことで、あなた方に恩を施して下さっているのである。もし、あなた方が本当のことを言っているならば、だが」。
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1 自分たちが服従(イスラーム*)を受け入れた、という主張のこと(アッ=シャウカーニー5:91参照)。
本当にアッラー*は、諸天と大地の不可視の世界*をご存知である。そしてアッラー*は、あなた方が行うことをご覧になるお方なのだ。