surah.translation .

ター・スィーン¹。これはクルアーン*と解明する啓典²の御印(アーヤ*)
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1 この文字群については、頻出名・用語解説の「クルアーンの冒頭に現れる文字群*」を参照。 2 「解明する啓典」については、ユースフ*章1の訳注を参照。
信仰者たちへの導きと,吉報である。
(彼らは、)来世こそをまさに確信しつつ、礼拝を遵守*し、浄財*を支払う者たち。
本当に、来世を信じない者たち、彼らに対してわれら*は、その(悪い)行いを目映く見せた¹。それで彼らは彷徨っているのだ。
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1 アッラー*が長い時間と豊かな糧を授けてくださったにも関わらず、彼らは自分たちに対するアッラー*の恩恵と善を、自分たちの欲望や自己満足、豪奢(ごうしゃ)さの追及のための手段とし、自分たちの宗教義務は放棄していた(アブー・ハイヤーン7:53-54)。識別章18の訳注も参照。
それらの者たちは(現世で)、忌まわしい懲罰がある者たち。そして彼らこそは、まさに来世において最大の損失者なのである。
(使徒*よ、)本当にあなたは、全知で英知あふれる*お方の御許から、クルアーン*をまさしく授かっている。
ムーサー*が、その家族に、(こう)言った時のこと(を思い起こさせよ)。「本当に私は、火を見出したのだ。私はそこから、あなた方に火に(道案内の)知らせか、あるいはあなた方が暖を取れるよう、一片の火種をあなた方に持って来るとしよう」。¹
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1 このアーヤ*が描写する情景については、ター・ハー章10とその訳注、物語章29も参照。
それで彼がそこにやって来ると、(こう)呼びかけられた。「火の中にある者と、その周りにいる者¹に祝福あれ。全創造物の主*、アッラー*に称え*あれ。
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1 「火の中にある者」と「その周りにいる者」の解釈には、「前者が火それ自体、後者がムーサ―*と天使*たち」「前者が火の近くにいたムーサ―*、後者が天使*たち」「前者が御光に包まれたアッラー*で、後者がムーサ―*と天使*たち」といった諸説がある(アル=クルトゥビー13:158-159参照)。
ムーサー*よ、本当にわれは,偉力ならびなく*英知あふれるアッラー*である」。
(アッラー*は仰せられた。)「そして、あなたの杖を投げてみよ」。(それで彼が杖を投げると、それが大蛇となった。)そしてそれが敏捷な小蛇のように躍動するのを目にした時、彼は背を向けて引き下がり、(そこには)戻って来なかった。(アッラー*は仰せられた。)「ムーサー*よ、怖がるのではない。本当にわが御許で、遣わされた者(使徒*)たちが怖がることはないのだから。
しかし不正*を犯し、それから(罪の)悪の後に、(悔悟という)善きもので換える者(、われはその者を赦してやろう)¹。実にわれは赦し深い者、慈愛深い*者なのだから。
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1 一説に、このアーヤ*は「不正*を犯し・・・換える者(は別で、怖がる)」とも解釈される。実際、ムーサ―*はコプト人を殺してしまったことで、報復されることを怖がっていた(前掲書13:161参照)。詩人たち章14、物語章15-17も参照。
また、あなたの手を自分の懐に入れてみよ。そうすれば、それはフィルアウン*とその民への九つの御印¹(の一つ)として、災い²もなしに白くなって出てくる。本当に彼らは(フィルアウン*とその民)は、放逸な者たちだったのだ」。
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1 「九つの御印」については、夜の旅章101の訳注を参照。 2 この「災い」については、ター・ハー章22の訳注を参照。
こうして彼らはのもとに、明らかなるわれら*の御徴(奇跡)が到達した時、彼らは言った。「これは紛れもない魔術である」。
そして彼らの心はそれ(奇跡の真実性)を確信しつつも、不正*と傲慢さによって、それを(言葉で)否定した。ならば見よ、腐敗*を働く者たちの結末がいかなるものであったかを?
また、われら*は確かに、ダーウード*とスライマーン*に知識を授けた。そして彼らは(その知識に則って行い、)言った。「私たちを、信心者であるその僕たちの多く(の者)よりお引き立て下さったアッラー*に全ての称賛*あれ」。
そしてスライマーン*は、ダーウード*(の預言者*としての使命と、知識と王権)を継ぎ、言った。「人々よ、私たちは鳥の言葉を教えられ、全ての(必要な)ものの内から授けられた。本当にこれこそは、紛れもない恩寵である」。
そしてスライマーン*のもとに、ジン*、人間、鳥からなる彼の軍勢が召集され、整列させられた。
やがて彼ら(スライマーン*の軍勢)が蟻の谷に到着した時、一匹の蟻が(その仲間たちに)言った。「蟻たちよ、自分たちの巣に入りなさい。スライマーン*とその軍勢が気づかぬまま、あなた方を(踏みつけて)粉砕してしまっては、決してなりませんよ」。
すると、彼(スライマーン*)はその言葉を(理解して)笑い出し、微笑んだ¹。そして言った。「我が主*よ、あなたが、私と私の両親にお恵みになったあなたの恩恵に私が感謝できるように、そしてあなたのお喜びになる正しい行い*を私が行えるようにして下さい。また、あなたのご慈悲によって(天国で)私に、あなたの正しい僕たちの仲間入りをさせて下さい」。
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1 スライマーン*は、自分が蟻の言葉を理解することが出来るという、アッラー*の恩恵を実感した(ムヤッサル378頁参照)。
そして彼(スライマーン)は、鳥たちを探し回って、言った。「ヤツガラシが見えないのは、どういうことか?いや、一体彼は、不在なのか?
私はきっと彼を厳しい罰で罰するか、あるいはその首をはねてやろう。さもなくば、(不在の言い訳として)はっきりとした証拠を、必ずや私のもとに持ってくるのだ」。
彼(ヤツガラシ)は少しの間、そのまま(不在)であった後¹、(スライマーン*のもとにやって来て、)言った。「私は、あなたが把握されなかったことを、把握しました。そしてサバア²から、紛れもないお知らせと共に、あなたのもとへとやって来たのです。
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1 「暫く待っていた」のは、スライマーン*だったという少数説もあり(アル=クルトゥビー13:180参照)。 2 「サバア」は、イエメンの一都市(ムヤッサル378頁参照)。
実に私は、彼ら(サバアの民)を治める一人の女性¹を見つけました。そして彼女は(王が現世で必要とする)全てのものを授けられ、偉大なる御座を有しています。
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1 彼女の名は、ビルキース・ビント・シャラーヒールとされる(アル=バガウィー3:498参照)。
私は、彼女とその民が、アッラー*を差しおいて太陽をサジダ*しているのを見ました。そしてシャイターン*が、彼らに、彼ら自身の(悪い)行いを目映く見せ、彼らを道¹から阻んでおり、彼らは導かれずにいます。
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1 この「道」とは、アッラー*への信仰と、かれのみを崇拝*すること(ムヤッサル379頁参照)。
諸天と大地において潜むもの¹をお出しになり、あなた方が隠すことも露わにすることもご存じのアッラー*に、彼らがサジダ*しないよう(、彼ら自身の悪い行いを目映く見せているのです)。
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1 「潜むもの」とは、天の雨、大地の植物などのこととされる(アッ=タバリ―8:6281参照)。
アッラー*は、かれ以外に(真に)崇拝*すべきいかなるものもないお方、偉大なる御座¹の主*」。(読誦のサジダ*)
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1 アッラー*の「御座」に関しては、高壁章54の訳注を参照。
彼(スライマーン*)は言った。「お前が本当のことを言っているのか、それとも嘘つきの類いであるか、調べてみよう。
私のこの書簡を携えて行き、それを彼ら(サバアの民)のもとに落として来るがよい。それから彼らから離れ、彼らがいかに反応するかを見守るのだ」。
(ヤツガラシがその命令に従って落として行った書簡を読むと、有力者たちを集めて、)彼女(ビルキース)は言った。「名士たちよ、本当に私のもとに、重大な書簡が届きました。
まさにそれはスライマーン*からのもので、実にそれは、『慈悲あまねく*慈愛深い*アッラーの御名において。
私(があなた方を招くもの)に対して高慢にならず、服従する者(ムスリム*)となられて、私のもとにいらっしゃるがよい』(というもの)です」。
彼女は言った。「名士たちよ、私の(この)件について、私にご教示下さい。あなた方が私と(討議のために)同席されない限り、私は何事も決定しません」。
彼らは言った。「私たちは強力ですし、この上ない勇猛さもあります。そして事は、あなたに委ねられているのです。ですから、あなたが何を命じられるか、ご検討ください」。
彼女は言った。「本当に王たちが町に(攻め)入れば、それを崩壊させ、その住民の最も高貴な者たちを、最も卑しい者たちとしたものです。ーー彼らは、そのようにするのであるーー¹。
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1 この挿入句は、アッラー*の御言葉。一説には、ビルキースの言葉(アル=クルトゥビー13:195参照)。
それで本当に私は、彼らへの贈り物を送り、使者たちが何を携えて戻って来るか、観察することとします」。
そして彼(ビルキースの使者)が、スライマーン*のもとに(贈り物を携えて)やって来た時、彼(スライマーン*)は言った。「一体、私に財を援助するというのか?アッラー*が私に授けて下さったもの¹の方が、あなた方に授けて下さったものよりも善いというのに。いや、あなた方は自分たちの贈り物に有頂天になっているのだ。
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1 莫大な財産をはじめ、預言者*としての使命や王権など、アッラー*から授かったもの(ムヤッサル380頁参照)。
(贈り物を持って、)彼らのもとへ戻るがよい。私たちは必ずや、彼らには到底太刀打ちできない軍勢と共に、彼らのもとに到来しよう。そして必ずや彼らを、惨めに卑しめられた状態で、そこから追い出してやろう」。
彼(スライマーン*)は言った。「名士たちよ、彼らが服従する者(ムスリム*)として私のもとにやって来る前に¹、あなた方の誰が、私のところに彼女の御座を持って来るのか?²」
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1 スライマーン*は、ビルキースらが来ることになるのを知っていた(アッ=サァディー605頁参照)。 2 スライマーン*が、何ゆえに彼女の御座を持って来るよう命じたのかについては、「彼女がイスラーム*を受け入れる前に、その御座を自分のものにしようと思ったため」「それを彼女の城から持って来て見せることで、自分の預言者*性とアッラー*の全能性の証拠とするため」「それを彼女に見せ、彼女の知力を試すため」などといった見解がある(アッ=タバリー8:6293-6294参照)。
ジン*の内の、あるイフリート¹が言った。「まことに私めが、あなたがご自身の場所からお立ちになる前に、それをあなたのもとに持って参りましょう。そして、本当に私はそれ(を持って来ること)に対し、実に強く、信用ある者²なのです」。
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1 「イフリート」とは、ジン*の内でも反抗的で強力な者のこととされる(ムヤッサル380頁参照)。 2 つまり、それを運ぶに十分な強さと、それに付いている様々な宝飾品に対して信用のある者、ということ(イブン・カスィール6:192参照)。
啓典からの知識を備えた者¹が言った。「まことに私めは、あなたが視線を移す前に、それをあなたのところへ持って参りましょう」。こうして(その者が御座を持って来ると、)彼(スライマーン*)はそれが確かに自分のところにあるのを見て、言った。「これは、私が果たして感謝するか、あるいは恩知らずとなるか試みるための、我が主*からの恩寵である。感謝する者は、誰でも、感謝することで自分自身を益するに外ならず、恩知らずな者があろうと、本当に我が主*は、(そのような者の感謝を必要とはされない)満ち足りた*お方、(そのような者にもお恵みになる)貴い*お方であられるのだ」。
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1 この者は、知識と正しさを備えた男であり、アッラー*にその折りが叶(かな)えられる者であったという(アッ=サァディー605頁参照)。
彼(スライマーン*)は(、彼の傍に控えている者に)言った。「彼女の御座を、彼女にわからないように(手直し)しておけ。(そうしたら)私たちは、一体彼女が(自分の御座の認知へと)導かれるか、あるいは導かれない者の仲間となるか、見てみるとしよう」。¹
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1 スライマーン*がこのようにした理由については、「シャイターン*たちが、『彼女の知性には問題がある』といったことを確かめるため「ジン*たちが、彼がビルキースと結婚し、子供が生まれれば、自分たちがスライマーン*の一族に仕え続けることになるのを恐れたため、『彼女は知性が薄弱で、その足はロバの足のようである』と吹きこんだため」など、諸説ある(アル=クルトゥビー13:207参照)。
こうして彼女(ビルキース)が、(スライマーン*のもとに)やって来た時、(彼女はこう)言われた。「あなたの御座は、このようですか?」彼女は言った。「それは、あたかも(私の)それのようです」。(スライマーン*は言った。)「私たちには彼女よりも前に知識¹が授けられたのであり、私たちは服従する者(ムスリム*)だったのだ。
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1 この「知識」は、導き、知力、思慮(しりょ)分別のこととされる(アッ=サァディー605頁参照)。
彼女がアッラー*をよそに崇めていたものが、彼女を(イスラーム*から)阻んだのだ。本当に彼女は、不信仰者*の民の一人だったのだから」。¹
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1 彼女は知力と、真理と虚妄を見分ける賢明さを備えた女性であったが、誤った教えの中で生まれ育ったがために、不信仰者*の宗教の中にあり続けた(ムヤッサル380頁参照)。
彼女に、(こう)言われた。「(宮殿の)中庭にお入りください」。そしてそれを見た時、彼女はそれを水溜まりと思って、自らの両脛を露わにした。彼(スライマーン*)は言った。「実にそれは(その下を水が流れる)、磨き上げられたガラス製の中庭なのです」。彼女は(スライマーン*の王国の偉大さを実感し、)言った。「我が主*よ、本当に私は自分自身に不正*を働いてしまいました。そしてスライマーン*と共に、全創造物の主*アッラー*に服従(イスラーム*)いたします」。
また、われら*は確かにサムード*に、彼らの同胞であるサーリフ*を遣わした。(サーリフ*は言った。)「アッラー(だけ)を崇拝*せよ」。するとどうであろう、彼らは言い争う二つの派¹となってしまった。²
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1 サーリフ*を信じた一派と、彼を信じない一派のこと(ムヤッサル380頁参照)。 2 この言い争いの一部については、高壁章73-76、フード*章61-63、詩人たち章141-154、月章23-26章も参照。
彼(サーリフ*)は(、不信仰の一派に)言った。「我が民よ、どうしてあなた方は善きものの前に、悪しきものを性急に求める¹のか?どうしてあなた方は、自分たちがご慈悲を授かるよう、アッラー*にお赦しを乞わない?」
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1 褒美をもたらしてくれる信仰や善行を後回しにし、罪をもたらす不信仰や悪行に急ぐ様を表す(前掲書381頁参照)。
彼らは言った。「私たちはあなたと、あなたと共に(あなたの宗教に)ある者を、不吉に思う¹」。彼(サーリフ*)は言った。「あなた方の不吉のもとは、アッラー*の御許にある²。いや、あなた方は試練にかけられている民³なのである」。
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1 「不吉に思う」については、高壁章131の訳注を参照。 2 この意味については、高壁章131の訳注を参照。 3 順境と逆境、善と悪によって試練にかけられている者、ということ(前掲書、同頁参照)。
町¹には、地上で腐敗*を働き、正しいことをしない九人の男たち²がいた。
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1 サムード*の町アル=ヒジュルのこと(アッ=タバリ―8:6305参照)。アル=ヒジュル80の訳注も参照。 2 この「九人の男たち」が、サムード*の有力者たちであり、雌ラクダを殺した者たちであるという(イブン・カスィール6:198参照)。高壁章73とその訳注、フード*章64-68、詩人たち章155-157、月章27-29、太陽章13-14も参照。
彼らは(互いに)言った。「お互いに、アッラー*に(こう)誓うのだ。『私たちは必ずや、彼(サーリフ*)とその家族を夜に陰謀し(て殺し)、それから彼の後見人には、(こう)言うのだ。私たちは彼の家族の殺害には立ち会っていないし、本当に私たちはまさしく正直者なのだ、と』」。
彼らはまさに策謀し、われら*も彼らが気付かぬ内に、まさに策謀した。¹
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1 つまりアッラー*は、彼らの策謀に対し、彼らへの懲罰を早めることで応じられた(アル=バガウィー3:509参照)。
(使徒*よ、)彼らの策謀の結末がいかなるものだったか、見てみよ。われら*が彼らとその民を、全滅させたことを。
そしてそれらは、彼らが不正*を働いていたことゆえ(、アッラー*に滅ぼされて)崩れ落ちた¹、彼らの家。本当にその中にはまさしく、知識ある民への御徴がある。
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1 この「崩れ落ちた」については、雌牛章259の訳注を参照。
またわれら*は、信仰し、(アッラー*を)畏れ*ていた者たちを救った。
また、ルート*(のことを思い出せ)。彼がその民に、(こう)言った時¹のこと。「一体あなた方は、(その醜行さを)心得ていながら、醜行²を行うのか?
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1 彼とその民の間に起こった話については、高壁章80-84、フード*章77-83、アル=ヒジュル章61-77、詩人たち章160-175、蜘蛛章28-35、月章33-40も参照。 2 「醜行」については、蜜蜂章90の訳注を参照。
本当にあなた方は女性を差しおいて、欲望ゆえに男性に赴こう¹としているのか?いや、あなた方は無知な民である」。
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1 つまり男色のこと(ムヤッサル381頁参照)。
その民の答えは、(このように)言うことだけであった。「ルート*の家族を、あなた方の町¹から追放するのだ。本当に彼らは、潔癖ぶった人々なのだから」。
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1 この「町」については、フード*章81の訳注を参照。
こうしてわれら*は彼と、彼の妻を除いた彼の家族を救った。われら*は彼女を、残っ(て滅ぼされ)た者たちの一人と定めたのだ。
そしてわれら*は彼らの上に、(石の)大雨を降らせた。警告を受けていた者たち(へ)の雨は、何と忌まわしかったことか。
(使徒*ムハンマド*よ、)言うがよい。「アッラー*に全ての称賛*あれ。そしてかれがお選びになった、かれの僕たちに平安を¹。一体アッラー*がよいのか、それとも彼らが(アッラー*に)並べているものか?
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1 つまり預言者*や使徒*たちの業績を讃え、その高い地位と、あらゆる悪や穢れからの無縁さ、アッラー*について彼らが語ったことにおける無謬性について、言及すること(アッ=サァディー607頁参照)。
いや、諸天と大地をお創りになり、あなた方に天から(雨)水をお降らしになり、それにより麗しい庭園ーーあなた方に、その木々を生やすことは叶わない¹--を生育させられたお方か(、それとも彼らが並べているものがよいのか)?一体、アッラー*と共に崇拝*するに値するものなど、あるのか?いや、彼らは(真理から)逸れ去る民である。
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1 つまり、アッラー*が水を与えて下さらない限りは、ということ(ムヤッサル382頁参照)。
いや、大地を安住の地とされ、その裂け目に河川を流れさせられ、そこに堅固な山々を設けられ、二つの海の間に障壁を置かれた¹お方か(、それとも彼らが並べているものがよいのか)?一体、アッラー*と共に崇拝*するに値するものなど、あるのか?いや、彼らの大半は分からないのだ。
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1 「二つの海の間の障壁」については、識別章53、慈悲あまねき*お方章19-20も参照。
いや、窮迫した者が呼べば応えられ、災いを取り除かれ、あなた方を地上の継承者¹とされるお方か(、それとも彼らが並べているものがよいのか)?一体、アッラー*と共に崇拝*するに値するものなど、あるのか?あなた方が教訓を得ることの、実に少ないこと。
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1 「継承者」については、家畜章165の訳注を参照。
いや、陸と海の闇の中、あなた方を導かれるお方、そしてそのご慈悲(雨)の前触れに吉報を告げる風を送られるお方か(、それとも彼らが並べているものがよいのか)?一体、アッラー*と共に崇拝*するに値するものなど、あるのか?アッラー*は、彼らが(アッラー*に)並べるものから、高遠であられる。
いや、創造をお始めになり、それから(再び)それを繰り返されるお方、そして天と地から、あなた方に糧をお授け下さるお方か(、それとも彼らが並べているものがよいのか)?一体、アッラー*と共に崇拝*するに値するものなど、あるのか?」言ってやれ。「あなた方の明証¹を持って来るのだ。もし、あなた方が本当のことを言っているのならば」。
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1 つまり、アッラー*の王権と崇拝において、かれに同意者があるという「明証」のこと(ムヤッサル383頁参照)。
(使徒*よ、)言ってやれ。「諸天と大地にあるいかなるものも、不可視の世界*を知らない。しかし、アッラー*だけ(が、ご存知)なのだ。そして彼らは、いつ蘇らされるか、知りもしない。
いや、彼らの知は来世で達成される¹。いや、彼らはそれ(来世)に疑念を抱いている。いや、彼らはそれに盲目²なのである」。
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1 彼らは、自分たちに来世が到来し、その日の恐怖を目の当たりにして初めて、来世を確信する(ムヤッサル383頁参照)。 2 「盲目」については、雌牛章7、家畜章50、雷鳴章16、フード*章20、24、巡礼*章46とその訳注も参照。
不信仰に陥った者*たちは言った。「一体、私たちと、私たちのご先祖が(死んで)土となった後、一体本当に私たちが(蘇らされて)出される身なのか?
以前にも私たちと私たちのご先祖様は、確かにこのこと(死後の復活)を約束されたのだ(が、その事実は目にしなかったし、起こりもしなかったのだ)。こんなものは、昔の人々のお伽噺に過ぎない」。
(使徒*よ、)言ってやれ。「あなた方は地上を旅して、罪悪者たちの結末がどのようなものであったか、見てみるがよい」。
そして、彼らゆえに悲しまず、彼らが策謀することゆえに心苦しくなるのではない。
彼ら(シルク*の徒)は言う。「この約束は、一体いつのことなのか?もし、あなた方が本当のことを言っているのなら?」
(使徒*よ、)言ってやれ。「あなた方が性急に求めているもの(アッラー*からの罰)の一部は、あなた方に近づいたかもしれない」。¹
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1 「復活の日*の近さ」については、蜜蜂章1、預言者*たち章1の訳注も参照。
実にあなたの主*は、人々に対するまさに恩寵の主なのだが、彼らの大半は感謝¹しないのだ。
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1 つまり感謝して信仰し、アッラー*だけを崇拝*すること(ムヤッサル383頁参照)。
また本当にあなたの主*は、彼らの胸が隠しているものも、露わにしているものも、ご存知である。
そして天と地に潜むいかなるものでも、明白な書¹に記されていないものはない。
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1 「明白な書」とは、守られし碑板*のこと(アッ=サァディー609頁参照)。
本当にこのクルアーン*は、イスラーイールの子ら*に、彼らが意見を異にする大半のことについて、語って聞かせる。¹
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1 例えばイーサー*に関して言えば、キリスト教徒*は神に神性を認めることで、ユダヤ教徒*は彼を嘘つき呼ばわりすることで、いずれも極端な立場を取った。一方クルアーン*は、彼をアッラー*のしもべ・使徒*の一人として位置づけ、公正かつ中庸(ちゅうよう)な立場を表明した(イブン・カスィール6:210参照)。
そして実にそれは、まさしく信仰者たちへの導きであり、慈悲なのだ。
本当にあなたの主*は、その裁決で、彼らの間をお裁きになる。かれは偉力ならびない*お方、全知者であられる。
ならば(使徒*よ)、アッラー*に全てを委ねよ*。あなたこそは、紛れもない真理の上にあるのだから。
(使徒*よ、)本当にあなたは呼びかけを、死人らに聞かせることも、聾たちに聞かせることも出来ない。彼らが(あなたから)背を向けて立ち去るのであれば。¹
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1 この「聾」については、雌牛章7、18、フード*章20,24とその訳注も参照。 1 この「大獣」の出現は、復活の日*の予兆の一つ(ムスリム「試練と復活の日の諸予兆の書」39参照)。
またあなたは、盲人¹たちをその迷いから導く者でもない。あなたが聞かせられるのは、われら*の御徴を信じる者だけ。というのも、彼らは服従する者(ムスリム*)なのだから。²
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1 この「盲人」については、雌牛章7、18、家畜章50、104、雷鳴章16、フード*章20、24、巡礼*章46とその訳注を参照。 2 最終的な導きがアッラー*のみに委ねられていることについては、雌牛章272、蜜蜂章37、ユーヌス*章99-100、物語章56、相談章52とその訳注も参照。
彼らに対する(懲罰の)御言葉が確定された時、われら*は彼らのために大地から大獣¹を出す。それは彼らに、(復活を否定する)人々が、われら*の御徴を確信してはいなかったことについて、話し聞かせるのだ。
われら*が、全ての共同体の内から、われら*の御徴を嘘呼ばわりしていた集団を召集し、彼らが整列させられる日のこと(を思い起こさせよ)。
やがて彼らがやって来ると、かれ(アッラー*)は仰せられる。「一体あなた方は、わが御徴¹を嘘呼ばわりしていたのか?それについて、よく知りもしなかった²のに?いや、一体あなた方は、兄を行っていたのか?」
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1 この「御徴」は、クルアーン*を始めとする、アッラーの唯一性*を示す証拠の数々のこと(ムヤッサル384頁参照)。 2 つまり、それが嘘だと熟知してはいなかったのに、嘘呼ばわりしていた、ということ(前掲書、同頁参照)。
彼らには、自分たちが不正*を働いていたことゆえの(懲罰という)御言葉が確定され、彼らは(まともな言い訳を)喋ることもない¹。
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1 夜の旅章97「盲目で、唖で、聾の状態のまま召集する」の訳注も参照。
一体彼らは、彼らがそこで安らぐようにわれらが夜を創り、昼を(生活のために)視界が利くものとしたのを、見なかったのか?実にそこにはまさしく、信じる民への御徴があるのだ。
角笛に吹き込まれ¹、諸天にいる全ての者と、大地にいる全ての者が戦慄する日のこと(を思い起こさせよ)。但し、アッラー*が(恐怖からの安全を)お望みになる者は別である。全ての者は低頭して、かれの御許にやって来るのだ。
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1 「角笛に吹き込まれ」ることについては、家畜章73の訳注を参照。
また、あなたは山々を、それらが静止しているものと思って見る。それは、雲の流れのように(早く)流れているのに¹。全てのものを完璧に仕上げられたアッラー*の御業。本当にかれは、あなた方のすることに通暁されているのだ。
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1 復活の日*における山々の様子については、洞窟章47の訳注を参照。
(復活の日*、)善行¹と共にやって来た者、彼にはそれよりも善きもの²がある。そして彼らはその日、戦慄から無事な者たちである。
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1 この「善行」は、アッラーの唯一性*の信仰と、かれのみを崇拝*すること、そして正しい行い*のこととされる(ムヤッサル385頁参照)。 2 この「善きもの」とは、天国のこととされる(前掲書、同頁参照)。
そして(復活の日*、)悪行¹と共にやって来た者、彼らは顔から逆様に業火の中に投げ込まれ(、こう言われ)る。「一体あなた方が報われているのは、自分たちが(現世で)行っていたこと(によるもの)以外の、何ものでもないのではないか?」
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1 この「悪行」は、シルク*を始めとした、諸々の悪行のこと(ムヤッサル385頁参照)。
(使徒*よ、言うのだ。)「私は外ならぬ、この町(マッカ*)の主¹を崇拝*するように命じられた。かれがそこを、聖なる地²とされたのだ。かれにこそ、全ては属する。また私は、服従する者(ムスリム*)の一人となるよう、命じられたのである。
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1 アッラー*はマッカ*だけではなく、全ての町の主*である。しかしここではマッカ*の民に、彼らに対するアッラー*の特別の恩恵を知らしめ、彼らがアッラー*のみを崇拝*すべきであることを訴(うった)えている(アッ=タバリー8:6335参照)。 2 そこでは不当な流血、不正*、狩猟(しゅりょう)、植物を刈ったりすることなども禁じられる(前掲書、同頁参照)。雌牛章125の訳注も参照。
そして、クルアーン*を誦む¹ことを(命じられた)」。導かれた者があれば、実に彼は自分を益するために導かれるだけであり、また迷う者があれば(、使徒*よ)、言ってやるのだ。「私は(信仰しない者にアッラー*からの懲罰を告げる、)警告者の一人に過ぎない」。
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1 「誦む」については、雌牛章121の訳注を参照。
そして(使徒*よ、)言うのだ。「アッラー*に全ての称賛*あれ。やがてかれはあなた方に、その御徴¹を見せ給い、あなた方はそれを知ることになる。あなた方の主*は、あなた方が行っていることに迂闊ではあられないのだ」。
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1 この「御徴」は、真理を示し、虚妄(きょもう)を明らかにする知識のこととされる(ムヤッサル385頁参照)。詳細にされた章53も参照。