ترجمة سورة التوبة

الترجمة اليابانية - سعيد ساتو
ترجمة معاني سورة التوبة باللغة اليابانية من كتاب الترجمة اليابانية - سعيد ساتو .
(これは)シルク*の徒の内で、あなた方が協約を結んだ者たちに対する、アッラー*とその使徒*からの解除(通告)である。¹
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1 この「解除」通告の原因は、預言者*率いるムスリム*軍がタブークの戦い*へと出征した際、偽信者*らが嘘の噂を広めたり、シルク*の徒らがアッラー*の使徒*と結んでいた協定を破棄したりしたことにあるとされる(アル=バガウィー2:314参照)。
ゆえに(シルク*の徒よ、)あなた方は四ヶ月間、地上を(安全に)通行するがよい。そして、あなた方がアッラー*(の懲罰)から逃れることなど出来ない身であり、アッラー*は不信仰者*たちを(現世と来世で)辱められるお方であることを、知るのだ。¹
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1 このアーヤ*が意図しているのは、当時ムスリム*たちとの協約において以下のような状態にあったシルク*の徒らである:①無期限の協約を結んでいた者たち、②期限が四ヶ月以下の協約を結んでいた者たち、③協約を結んでいたが、それを破った者たち(ムヤッサル187頁参照)。一方、四ヶ月以上の協約を結んでおり、裏切り行為も協約の違反もなかった者たちについては、アーヤ*4でその処遇が定められている(アッ=サァディー328頁参照)。
また(これは、)大いなるハッジ*の日における、アッラー*とその使徒*から人々への、「アッラー*とその使徒*は、シルク*の徒とは無縁である」という通告¹である。もし(シルク*の徒よ)、あなた方が悔悟し(てシルク*を止め)たなら、それがあなた方にとってより善いこと。そしてもし(シルク*の放棄と信仰から)背を向けるのならば、自分たちがアッラー*(の懲罰)から逃れることなど、出来ない身であることを知るがよい。(使徒*よ、)不信仰に陥った者*たちに、痛烈な懲罰の吉報を告げてやる²のだ。
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1 「大いなるハッジ*の日」とは、ズル=ヒッジャ月*十日のいわゆる「犠牲祭の日」のこと(ムヤッサル187頁参照)。預言者*は、アリー*をこれらのアーヤ*と共に巡礼*期のマッカ*へと派遣し、読誦による通告をさせた(アル=ブハーリー4655参照)。 2 「吉報を告げる」という言い回しについては、イムラーン家章21の訳注を参照。
但しシルク*の徒の内、あなた方が協約を結んだ者たちで、それからあなた方(との協約)に対していかなる不備もなく、あなた方に(敵)対していかなる者も援助しなかった者たちは、別である。ならば彼らに対しては、彼らとの協約を、その期限まで全うせよ。本当にアッラー*は、身を慎む者¹たちをお好みになるのだから。
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1 シルク*、裏切り、その他の罪から身を慎む者のこと(ムヤッサル187頁参照)。
また、禁じられた(四ヶ)月¹が終了したら、シルク*の徒をどこでも見つけた場所で殺すがよい²。そして彼らを捕まえ、彼らを阻み³、彼らのためにあらゆる見張り場所に待機せよ。それでもし彼らが(不信仰から)悔悟し、礼拝を遵守*して浄財*を支払ったならば、彼らを自由にしてやるがよい。本当にアッラー*は赦し深いお方、慈愛深い*お方なのだから。
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1 大半の解釈学者によれば、ここでの「禁じられた月」とは「神聖月*」のことではなく、シルク*の徒との戦いが禁じられ、彼らの生命が保証された四ヶ月のこと(アル=カースイミー8:3072-3073参照)。 2 雌牛章190、アーヤ*36とその訳注も参照。 3 許可がない限り、ムスリム*の国に入ったり、そこで自由に振る舞ったりすることから阻むこと(アル=クルトゥビー8:73参照)。
また(使徒*よ、)シルク*の徒の誰かが、あなたに庇護を要請してきたら、彼がアッラー*の御言葉(クルアーン*)を耳にする(ことで、その導きを知ることが出来る)まで、彼を庇護してやるがよい¹。それから彼を、彼にとって安全な場所まで送り届けてやれ。それというのも、彼らが(イスラーム*の実像を)知らない民であるからなのだ。
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1 たとえイスラーム*法統治国家と戦争中の状態にある国の者でも、文書などの配送、商売、調停・停戦の申し出、ジズヤ*の納付などの目的のため、入国・滞在許可をその統治者、またはその代理人に要請する者は、それを許可され、滞在中の安全を保障される(イブン・カスィール4:114参照)。
アッラー*の御許とその使徒*のもとで、どうしてシルク*の徒に対する協約などがあり得ようか?但し、ハラーム・マスジド*であなた方が協約¹を結んだ者たちは、別である。彼らがあなた方(との協約の遵守)に忠実である限り、あなた方も彼ら(との協約の遵守)に忠実であれ。本当にアッラー*は、身を慎む者²たちをお好みになるのだから。
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1 この「協約」は、フダイビーヤの和議*のこと(ムヤッサル188頁参照)。 2 「身を慎むもの」については、アーヤ*4の訳注を参照。
どうして(そのようなことが、あり得ようか)?もし彼ら(シルク*の徒)があなた方に対して優位に立てば、彼らはあなた方に関して血縁も契約も遵守しないというのに。彼らは口ではあなた方を喜ばせるが、その心は拒絶しているのであり、彼らの大半は放逸なのだ。
彼らはアッラー*の御徴と引き換えに僅かな代価を買い、(自分たちと人々を)かれの道から阻んだ。本当に彼らが行っていたことは、何と忌まわしいことか。
彼らは信仰者に対し、血縁も契約も遵守しない。そしてそれらの者たちこそ、(契約の破棄において)度を越した者たちなのだ。
それで、もし彼らが(シルク*から)悔悟し、礼拝を遵守*し、浄財*を施したのであれば、(彼らは)宗教(イスラーム*)における、あなた方の同胞である。われら*は知識ある民に、御徴¹を明らかにするのだ。
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1 この「御徴」は、アッラー*がご説明になる法規定のこと(アブー・ハイヤーン5:9参照)。
また、もし彼ら(シルク*の徒)がその協約後に確約を破り、あなた方の宗教(イスラーム*)を中傷したならば、不信仰の長たちと戦え。本当に、彼らには確約などないのだから。(それは)彼らが、(不信仰とイスラーム*への敵対を)止めるようにするためである。
一体あなた方は、自分たちの確約を破り、(マッカ*からの)使徒*の追放を意図し、あなた方に対して最初に仕掛けてきた¹民と戦わないのか?一体あなた方は、彼らを怖れるのか?ならば、アッラー*の方が、より怖れるにふさわしいお方なのだ。もしあなた方が、信仰者であるというならば。
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1 バドルの戦い*で先に仕掛けてきた(戦利品*章47の訳注を参照)のは、あるいはフダイビーヤの和議*の破棄を最初に行ったのは、彼らの方である(イブン・カスィール4:117参照)。
彼らと戦え。アッラー*はあなた方の手でもって彼らを罰され、彼らを辱められ、あなた方を彼らに勝利させて下さろう。そして信仰する民¹の胸(の悲しみ)を、癒して下さるのだ。
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1 シルク*の徒からの迫害を蒙(こうむ)ってきたムスリム*のこと。あるいはフダイビーヤの和議*の後、彼らの協約違反によって憂き目を見た、アッラー*の使徒*の同盟部族フザーアのこと(アッ=タバリー5:3949参照)。
また、彼らの心の憤りを解消して下さろう。アッラー*はかれがお望みになる者の悔悟を、お受け入れになる。アッラー*は全知者、英知あふれる*お方。
いや、一体あなた方は、(試練¹から)放免されるとでも思い込んでいたのか?アッラー*はあなた方の内で、アッラー*とその使徒*と信仰者たち以外を腹心とすることなく努力奮闘した者たちを、まだ如実に表されてはいないというのに。アッラー*は、あなた方の行なうこと(全て)に通暁されているお方。
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1 「試練」については、雌牛章214、イムラーン家章142、154,179、蜘蛛章2とその訳注、ムハンマド*章31、王権章2とその訳注も参照。
自らに対して不信仰を証言していながら、シルク*の徒がアッラー*のマスジド*を管理することなど、あってはならない。そのような者たちは、その行いが台無しになるのである。そして彼らはまさしく業火の中に、永遠に留まることになるのだ。
アッラー*のマスジド*を管理するのは、アッラー*と最後の日*を信じ、礼拝を遵守*して浄財*を支払い、アッラー*以外の何も怖れない者のみ。そしてそれらの者たちは恐らく、導かれた者の類いとなろう。
(我が民よ、)一体あなた方は、ハッジ*の給水とハラーム・マスジド*の管理(に従事する者)を、アッラー*と最後の日*を信仰し、アッラー*の道において努力奮闘する者と同様にするのか?彼らはアッラー*の御許で、同等ではない¹。アッラー*は不正*者である民を、お導きにはならないのだ。
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1 ある種のシルク*の徒は、マッカ*におけるそれらの高貴な任務が最善の行いであるとし、ある種のムスリム*は、信仰とアッラー*の道における奮闘こそが最善の行いであると主張して、議論した。このアーヤ*は、後者の主張を確証すべく下ったのだという(アッ=サァディー331頁参照)。
信仰して移住*し、自らの財産と生命をかけてアッラー*の道に努力奮闘する者は、アッラー*の御許において、より位が偉大なのである。そして、そのような者たちこそが勝利者なのだ。
彼らの主*は彼らに、その御許からのご慈悲とご満足、楽園の吉報をお告げになる。そこ(楽園)には彼らのため、永遠の安寧があるのだ。
彼らはそこに、ずっと永遠に留まる。本当にアッラー*、かれの御許には、この上ない褒美がある。
信仰する者たちよ、自分たちの親や兄弟を盟友としてはならない、もし彼らが信仰よりも不信仰を好む¹のならば。そして、あなた方の内で彼らを盟友とする者があれば、そのような者たちこそは不正*者なのである。²
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1 具体的には、イスラーム*に敵対する不信仰者*に対し、ムスリム*たちの秘密を明かしたり、彼らにムスリム*たちにとっての重要な事柄を相談したりすること(ムヤッサル190頁参照)。 2 最も近しい間柄でさえそうなのだから、それ以下の関係にある者たちであれば、尚更である(アッ=サァディー332頁参照)。イムラーン家章28の訳注も参照。
(使徒*よ、)言ってやるがいい。「あなた方の親、あなた方の子供、あなた方の兄弟、あなた方の配偶者、あなた方の近親、あなた方の稼いだ財産、また、あなた方がその不振を怖れている商売、あなた方が満足する住まいが、アッラー*とその使徒*、そしてかれの道における努力奮闘よりもあなた方にとって好ましいならば、アッラー*がそのご命令¹をもたらされるまで待つがよい。アッラー*は、放逸な民をお導きにはならないのだ」。
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1 アッラー*の懲罰という「ご命令」のこと(ムヤッサル190頁参照)。
(信仰者たちよ、)アッラー*は確かに、多くの場面であなた方をお助けになった¹。また自分たちの多勢ぶりが、あなた方を悦に入らせたフナイン*の日も(、同様であった)。そしてそれはあなた方の何の役にも立たず、大地はその広さにも関わらずあなた方にとって狭くなり²、更にあなた方は背を見せて敗走したのである。
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1 そしてそれは、ムスリム*たちが成功に必要な手はずを整(ととの)え、かつアッラー*に全てを委ねた時であった(前掲書、同頁参照)。 2 広い大地が、狭く感じられるほどの苦境や困難を表している(アブー・ハイヤーン5:25参照)。
それからアッラー*は、その使徒*と信仰者たちに(彼らを堅固にすべく、)かれの静寂をお下しになり、あなた方の目には見えなかった軍勢¹を下され、不信仰だった者*たちを罰された。それが不信仰者*たちへの報いなのだから。
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1 この「軍勢」とは、天使*たちのことである、と言われる(ムヤッサル190頁参照)。
そしてその後アッラー*は、かれがお望みになる者の悔悟¹をお受け入れになる。アッラー*は、赦し深いお方、慈愛深い*お方。
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1 不信仰を棄(す)て、イスラーム*を受け入れた者の「悔悟」のこと(前掲書191頁参照)。
信仰する者たちよ、シルク*の徒こそは不浄¹である。ゆえに今年²以降、彼らはハラーム・マスジド*³に近付いてはならない。そして、もしあなた方が困窮を怖れるのであっても、やがてアッラー*がそのご恩寵でーーかれがお望みならーー、あなた方を豊かにしてくれよう⁴。本当にアッラー*は、全知者、英知あふれる*お方なのだから。
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1 大多数の学者は、この「不浄さ」を物質的・本質的なものではなく、「信仰的な不浄さ」としている(イブン・カスィール4:131参照)。 2 アリー*がマッカ*でこの禁止通告を行った、ヒジュラ暦*9年のこと(ムヤッサル191頁参照)。アーヤ*3の訳注も参照)。 3 この「マスジド・ハラーム*」は、マッカ*の聖域のこととされる(前掲書191頁参照)。 4 イスラーム*到来以前にも、アラビア半島のシルク*の徒にはマッカ*巡礼*・訪問の慣習があり、そのことはマッカ*の物質的繁栄に大きく貢献していた。それゆえアッラー*からこのご命令が下った時、マッカ*の民のある者たちは、自分たちの大きな収入源が消失してしまうことを怖れたのだという(アッ=タバリー5:3965参照)。
(ムスリム*たちよ、)啓典を授けられた者*たちの内、アッラー*と最後の日*を信仰せず、アッラー*とその使徒*が禁じた物事を禁じもせず、真理の宗教に従わない者たちと、彼らが、すごすごとシズヤ*を手渡しで払うまで戦うのだ。¹
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1 イスラーム*の勝利がアラビア半島で確実なものとなった時、近隣諸国のキリスト教徒*たちは危機感を強めた。ローマ帝国は、シャーム地方(現在のシリア、パレスチナ周辺地域)を治めさせていたガッサーン族のキリスト教徒*を介し、対ムスリム*の戦争準備を始める(イブン・アーシュール10:162参照)。そしてヒジュラ暦*9年にこのアーヤ*が下ったことにより、ムスリム*たちはシャーム地方に近接するタブーク*へと出征したとされる(イブン・カスィール4:132参照)が、この前年にはガッサーン族が預言者*の使節を殺害したことが原因で、ムウタの戦い*が起きている(ムバーラクフーリー387参照)。
ユダヤ教徒*は言った。「ウザイル¹はアッラー*の御子である」。また、キリスト教徒*は言った。「マスィーフ*(イーサー*)はアッラー*の御子である」。それは(彼ら)以前の不信仰だった者*たちの言葉に似た、口先だけの彼らの言葉である。アッラー*が彼らを成敗してくださいますよう。彼らはどうして、(真理から)背かされるのか?
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1 「ウザイル」は、一説には旧約聖書の「エズラ」のこと(イブン・アーシュール10:167-168)。
彼ら(啓典の民*)はアッラー*を差しおいて、彼らの学者や修道僧たちを、彼らの主*としたのだ。また、マルヤム*の子マスィーフ*も(主とした)¹。彼らは、唯一の神(アッラー*)のみを崇拝*することしか、命じられてはいなかったというのに。かれ以外に、(真に)崇拝*すべきものなど存在しない。彼らがシルク*を犯しているものから(無縁な)、アッラー*に称え*あれ。
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1 学者や修道僧を「主として選ぶ」とは、アッラー*が定める法をそっちのけにし、彼らが定める法に従うこと。イーサー*については、彼に神性を認め、崇拝*の対象としたこと(ムヤッサル191頁参照)。
彼らは、その口先でアッラー*の御光¹を消してしまおうと望んでいる。そしてアッラー*は、その御光を完遂させずにはおかれない。たとえ不信仰者*たちが、(それを)嫌おうとも(、である)。
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1 この「御光」とは、イスラーム*、そしてアッラーの唯一性*を示す証拠のこと(前掲書192頁参照)。
かれは、その使徒*を導きと真理の宗教(イスラーム*)と共に遣わされたお方。(それは)かれが、それ(イスラーム*)をあらゆる宗教の上に君臨させる¹ため。たとえ、シルク*の徒が(そのことを)嫌おうとも(、なのだ)。
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1 つまりイスラーム*はあらゆる宗教を撤廃(てっぱい)し、唯一の宗教となる。あるいは、他宗教の信徒を落ちぶらせる(アル=バイダーウィー3:142参照)。
信仰する者たちよ、本当に(啓典の民*の内の)多くの学者や修道僧たちは、まさに人々の財産を偽って貪り、(自分たちと人々を)アッラー*の道から阻んでいる。そして金銀を貯め込み、それをアッラー*の道において施すことのない者たち¹、彼らには(使徒*よ、)痛ましい懲罰の吉報を告げる²がよい。
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1 教友*アブー・ザッル*によれば、これは啓典の民*の不信仰者*だけではなく、浄財*の義務を果たさないムスリム*のことも含んでいる(アル=ブハーリー1406、4660参照)。 2 「懲罰の吉報を告げる」という言い回しについては、イムラーン家章21の訳注を参照。
それら(の金銀)が地獄の業火の中で熱せられ、彼らの額と脇腹と背中がそれで焼き付けられる(復活の)日*。(彼らには、こう言われる。)「これが、お前たちが自分たちのために貯め込んでいた物である。ならばお前たちは、自分たちが貯め込んでいた物(ゆえの罰)を味わうがよい」。
実に、アッラー*が諸天と大地を創造された日、アッラー*の書¹でのアッラー*(の裁定)における月数は、十二か月である。その内の四ヶ月が神聖月*。それが正しい宗教なのだ。ならば、そこにおいて自分たちに不正*を働いてはならない¹。また、シルク*の徒と全面的に戦え、彼らがあなた方と全面的に戦うように²。そしてアッラー*は敬虔な*者たちと共にあるということを、知るのだ。
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1 この「シルク*の徒」は、アーヤ*2,5で言及されている期限が終了したシルク*の徒のこととされる(アル=ジャザーイリー2:366参照)。イスラーム*は、(その宗教を問わず、)協約を結んでいる者・安全の保障を与えている者(アーヤ*6の訳注も参照)の殺害を、厳しく禁じている(アル=ブハーリー3166参照)。また、戦闘状態にある非ムスリム*との戦いにおいては、まずイスラーム*へと招き、それを受容しなければシズヤ*の支払いを呼びかけ、彼らがそれらを全て拒んで初めて、攻撃が許される。また戦闘においても、女性、子供、老人、修道僧のほか、戦闘員ではない農民、使節などを殺害することは禁じられる(クウェイト法学大全16:143、148-149参照)。
実に(神聖月*の)延期は、不信仰における(更なる)上乗せである。不信仰に陥った者*たちは、それによって迷わせられているのだ。彼らはアッラー*が禁じられた(神聖月*の)数に帳尻合わせして、ある年にはそれを合法とし、また別の年にはそれを禁じ、アッラー*の禁じられたものを合法としている¹。彼らにはその悪い行いが、目映く映ったのだ。アッラー*は、不信仰である民をお導きにはならない²。
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1 ジャーヒリーヤ*のアラブ人たちには、アッラー*によって定められた四つの神聖月*を守らず、戦争などの自分たちの都合に合わせ、ある神聖月*を遅らせたり早めたりし、その分を本来神聖月*でない月にあてがうという習慣があった(ムヤッサル193頁参照)。 2 つまり不信仰に固執(こしつ)し、それをやめようとしない者は、真に求められるべき目的へと導かれることはない、の意味(アッ=シャウカーニ2:514参照)。
信仰する者たちよ、あなた方に「アッラー*の道に出征せよ」と言われた後、(自分たちの)土地に(へばりついて)もたもたしたのはどういうことか?一体、あなた方は来世をよそに、現世の生活に満足しているというのか?現世の生活の楽しみなど、来世(との比較)においては、ごく僅かな物でしかないのだぞ。¹
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1 このアーヤ*は、タブークの戦い*への出征に関して下った。当時、人々は苦境にあった上、暑さが厳しく、果実が実る時節にあった。しかもタブークはとても遠い土地で、敵の数も多かったため、人々は出征に億劫(おっくう)になったのだという(アル=バガウィー2:348参照)。
(信仰者たちよ、)もし出征しないのであれば、かれ(アッラー*)はあなた方を痛ましい懲罰で罰され、あなた方以外の(アッラー*とその使徒*に従順な)民を代わりに置かれよう。あなた方がかれのことを害することなど、微塵もない。アッラー*は全てのことがお出来のお方。
たとえ、あなた方が彼(ムハンマド*)を援助しなくても、アッラー*は不信仰に陥った者*たちが、二人の内の一人だった彼を(マッカ*から)追放した時、確かに彼を援助されたのである。二人が洞窟の中にあった時、つまり彼(ムハンマド*)がその同伴者に「悲しむのではない。本当にアッラー*は私たちと共にあるのだから」と言った時。アッラー*は彼にその静寂をお下しになり、あなた方の目に見えない(天使*の)軍勢によって彼をお助けになり、不信仰に陥った者*たちの言葉を最下のものとされた¹。アッラー*の御言葉こそは最上のものなのだ²。アッラー*は偉力ならびない*お方、英知あふれる*お方。
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1 ここで描写されているのは、預言者*ムハンマド*と教友*アブー・バクルの二人が、マディーナ*への移住*のためにマッカ*を出発した時の出来事。彼らは追っ手を撒(ま)くため、マッカ*郊外のサウル洞窟に一時身を隠したが、追っ手の足はその間近にまで迫った。アブー・バクルは預言者*がそこで捕まってしまうことを恐れたが、預言者*の彼に対する慰(なぐさ)めの言葉通り、アッラー*は彼らをお守りになった。このようにアッラー*は、預言者*にただ一人の同伴者しかいなかった時にも、彼をお助けになった。だから今や、一部の者が出征に応じなかったとしても、アッラー*によって彼が援助されることは容易なのである(アッ=タバリー5:3998参照)。 2 「不信仰に陥った者*たちの言葉」とは、シルク*の言葉。それは制圧され、蔑(さげす)まされるものであることから、「最下」とされる。また「アッラー*の御言葉」とは、タウヒード*の言葉、シャハーダ*の言葉。シルク*とその民を制することから、「最上」と表されている(前掲書5:4000参照)。
軽かろうと、重かろうと¹、出征し、あなた方の財産と生命をかけて、アッラー*の道において努力奮闘せよ。それがあなた方にとって、より善いことなのである。もし、あなた方が(その徳と褒美を)知っていたのならば。
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1 「軽かろうと、重かろうと」の解釈には、「分散して、または軍隊で」「元気があっても、なくても」「貧しくても、豊かでも」「若くても、年寄りでも」「扶養すべき者がなくても、あっても」などの諸説がある(アル=クルトゥビー8:150参照)。
(預言者*よ、)もしそれが手近な利益だったり、適度な(距離の)旅¹だったなら、彼ら(偽信者*たち)はあなたについて行ったのであろう。だが彼らには距離が遠かった(ために、厳しく感じられた)のである。そして彼らは、アッラー*に誓(ってこう言)う。「出来るものなら、私たちはあなた方と共に出発したのだが」。彼らは(嘘と偽の信仰で、)自分自身を滅ぼしている。アッラー*は本当に彼らが、まさしく嘘つきであることをご存知なのだ。
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1 タブークの戦い*の出征にまつわる状況については、アーヤ*38の訳注を参照。
(預言者*よ、)アッラー*はあなたを大目に見られた。(言い訳をして出征しなかった者の内、その言い訳において)正直だった者たちがあなたに明らかになり、あなたが(彼らの内の)嘘つきどもを知る前に、彼らに(出征の免除を)許可するとはどういうことか?¹
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1 使徒*・預言者*の無謬(むびゅう)性については、雌牛章36の訳注を参照。
アッラー*と最後の日*を信じる者は、自らの財産と生命をかけて努力奮闘することにおいて、あなたに(嘘の言い訳をしつつ、出征免除の)許可を請うたりはしない。アッラー*は敬虔な*者たちを、ご存知のお方。
実にあなたに(嘘の言い訳をして、出征免除の)許可を請うのは、アッラー*と最後の日*を信じず、その心が(イスラーム*に対する)疑惑に満ちた者たちだけである。そして彼らは自らの疑惑の中で、右往左往しているのだ。
もし彼ら(偽信者*たち)が出発を望んだなら、そのために装備を整えただろう。しかしアッラー*は彼らの遠征を厭われ、彼らを億劫にさせられたのだ。そして彼らに、「居残る者たち¹と共に、残っていよ」と言われた²のである。
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1 ここでの「居残る者たち」とは女性など、イスラーム*法的に正当な理由から、出征を免除された者たちのこと(アッ=サァディー339 頁参照)。 2 この言葉の主には、「シャイターン*」「彼ら(偽信者*たち)自身」「預言者*」「アッラー*」といった解釈がある(アッ=シャウカーニー2:522参照)。
たとえあなた方と共に出発したとしても、彼ら(偽信者*たち)はあなた方に堕落しか上乗せせず、あなた方に誘惑¹を望みつつ、あなた方の間を奔走する²ーー(信仰者たちよ、)あなた方の中には彼らのスパイもいるのだーー。アッラー*は、不正*者たちのことをご存知のお方。
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1 この「誘惑」の解釈には、「敵軍の強大さ をほのめかして士気を下げること」「困難や悪事」「シルク*」といった説がある(アル=バガウィー2:355参照)。 2 具体的には、信仰者の間にお互いに対する憎悪を生じさせるべく、陰口や悪口などを広めたりすること(ムヤッサル194頁参照)。
(預言者*よ、タブークの戦い*)以前から、彼ら(偽信者*たち)は確かに(信仰者たちへの)誘惑¹を望み、あなたに対して策を練り上げて来た²。(それは)真理が到来し、アッラー*の物事³が顕現するまでのことだった。彼らはそれを嫌っていたのだが。
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1 それまでにも偽信者*たちは、ウフドの戦い*や部族連合の戦い*などで、預言者*がもたらした教えを滅ぼそうと、策略を練ってきたものだった(前掲書195頁参照)。 2 「真理」とはアッラー*からの勝利で、かれの「物事」とは、イスラーム*のこととされる(アッ=タバリー5:4010参照)。
また、彼ら(偽信者*たち)の内には、「私に(出征からの残留を)お許し下さい。そして、私のことを試練にかけないで下さい」と言う者もいる。彼らはまさに、(偽の信仰という)試練の中に陥ったのではないか。そして本当に地獄は、不信仰者*たちをまさに包囲している。¹
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1 このアーヤ*は、自分は女性に目がなく、ローマ人女性を見たらその虜(とりこ)になってしまうのを恐れる、と嘘の言い訳をし、タブークの戦い*に出征しなかった者に関して下ったとされる(アッ=タバリー5:4012参照)。
(預言者*よ、)もしあなたに善いことが起これば、それは彼ら(偽信者*たち)を消沈させる。そしてもしあなたに災厄が降りかかれば、彼らは「私たちは確かに前もって、大事を取っておいたのだ¹」と言い、有頂天になって(あなたから)背き去る。
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1 「大事を取っておいて」とは、ムスリム*軍の敗北と苦難を予期して、タブークに出征しなかったことを指す(ムヤッサル195頁参照)。
(預言者*よ、彼らに)言ってやるがよい。「私たちには、アッラー*が私たちにお定めになったことしか起こらないーーかれは私たちの庇護者*であるーー。そして信仰者たちには、アッラー*にこそ全てを委ね*させるのだ」。
(預言者*よ、彼らに)言うのだ。「あなた方は私たちに、二つの善きこと¹のいずれかを待ち望んでいるに外ならないのではないか?そして私たちはあなた方に、アッラー*がその御許からの懲罰によって、あるいは私たちの手(による成敗)によって、あなた方を襲われるのを待ち望んでいるのである。ならば、待ち望むがよい。本当に私たちも、あなた方と共に待ち望む者となるから」。
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1 「二つの善きこと」とは、①敵への勝利と、現世と来世における褒美、②殉教(じゅんきょう)と、その偉大なる地位のこと(アッ=サァディー339頁参照)。
(預言者*よ、偽信者*たちに)言ってやるのだ。「従順であれ、嫌々であれ、施すがよい。あなた方から(アッラー*に)受け入れられることなど、ないのだ。本当にあなた方は、放逸な民だったのだから」。
また、彼らの施しが、受け入れられることを彼らから阻んだのは、彼らがアッラー*とその使徒*を否定し、礼拝にはいつも面倒くさそうに顔を出し、嫌々にでしか施すことがないからに外ならない。
ならば、(預言者*よ、われら*が彼らに与えた)その財産や子供に、心引かれてはならない。アッラー*はそれらによって、現世の生活で彼らを罰せられ¹、彼らが不信仰者*として事切れることを、まさにお望みなのだから。
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1 つまり、それらをアッラー*の御許での褒美(ほうび)を得るための手段としないため、それらの獲得における消耗(しょうもう)や、そこにおける損失ゆえに「罰せられ」ること(ムヤッサル196頁参照)。戦利品*章28の訳注も参照。
また彼ら(偽信者*たち)は、あなた方の仲間ではないのに、本当に自分たちはまさしくあなた方の仲間である、と(嘘をついて)アッラー*に誓う。しかし彼らは、怖気づいている民なので(、そのようにするので)ある。
もし避難所や洞窟、穴でも見つければ、彼らは一目散に、そこへと退散するであろう。
また、彼ら(偽信者*たち)の中には、施しのことであなたをけなす者もいる。それで彼らは、そこから与えられれば満足し、そこから与えられなければ、どうであろうか、激怒するのである。¹
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1 このアーヤ*は、預言者*ムハンマド*のもとに集められた施しを分配している時、ある男が「公正に分配せよ」と言いがかりをつけたことに関して下ったとされる(アル=ブハーリー3610参照)。
もし彼らが、アッラー*とその使徒*が自分たちに与えてくれたものに満足し、「私たちにはアッラー*だけで十分。アッラー*はその恩寵によって、そしてその使徒*も(彼がアッラー*から授かったものから)、私たちにお授け下さるだろう。本当に私たちは、アッラー*にこそ(豊かさを)求める者なのだから」(と言えばよかったものを)。
(義務の)浄財*は、困窮者*、貧者*、それ(浄財*の徴収)に携わる者、(それを与えられることによって)心が融和される者¹、首²、借金している者³、アッラー*の道(ゆえに努力奮闘する者)、旅路(で苦境)にある者のためにのみ(与えられる)。(それは)アッラー*からの義務(として定められた)。アッラー*は全知者、英知あふれる*お方であられる。
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1 「心が融和される者」とは、浄財*の受給によってイスラーム*への改宗や信仰心の強化が望まれる者や、それによってムスリム*の利益や害悪の防止につながること、とされる(ムヤッサル196 頁参照)。 2 「首」については、雌牛章177の訳注を参照。 3 借金があるが、返済できない者のこと。尚、不適切なことにおいて借金した者については、悔悟するまで浄財を受給する資格はない(アル=クルトゥビー8:183参照)。
また、彼ら(偽信者*たち)の中には預言者*を害し、「奴は耳なのだ¹」と言う者がある。(預言者*よ、)言ってやるのだ。「(ムハンマド*は)あなた方への善の耳なのである²。彼はアッラー*を信じ、信仰者たち(の言うこと)を信じる。また(彼は)、あなた方の内の信仰する者たちへの慈悲なのだ。そしてアッラー*の使徒*を害する者たち、彼らには痛ましい懲罰がある」。
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1 何を言っても鵜呑(うの)みにする、という蔑(さげす)みの言葉(ムヤッサル196頁参照)。 2 善いことのみを聞き入れる耳である、ということ(ムヤッサル196頁参照)。あるいは、「正直者と嘘つきを聞き分ける耳」(イブン・カスィール4:170参照)。
彼ら(偽信者*たち)は、あなた方(信仰者たち)を満足させようとし、あなた方のためにアッラー*に(嘘の誓いを)誓う。アッラー*とその使徒*の方が、満足させるにより相応しいというのに。もし彼らが、(本当に)信仰者であるというのならば。
一体、彼ら(偽信者*たち)は知らないのか?誰であろうと、アッラー*とその使徒*に歯向かう者、彼には永遠に留まることになる地獄の業火がある、ということを?それはこの上ない屈辱なのである。
偽信者*たちは、その心の内(にある不信仰)を自分たちに告げるスーラ*が、彼ら¹に下ることを警戒している。(預言者*よ、)言ってやれ。「嘲笑しているがよい。本当にアッラー*はあなた方が警戒しているものを暴き出されるお方なのだから」。
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1 この「彼ら」が誰を指すかについては、「信仰者たち」「偽信者*たち」という説がある(アッ=シャウカーニ2:536参照)。
(預言者*よ、)もしもあなたが、彼らに(預言者*とその教友*たちについて何を言ったのか、と)尋ねたならば、彼らはきっと(こう)言うのだ。「私たちはふざけて、戯言を言っていただけですよ」。言ってやるがいい。「一体あなた方は、アッラー*とその御徴と、その使徒*を嘲笑していたのか?¹
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1 このアーヤ*は、タブークへの遠征中、偽信者*の一派が預言者*ムハンマド*とムスリム*のことを陰で笑いものにしたことに関し、下ったとされる(アッ=タバリー5:4037-4039参照)。
言い訳をするのではない。あなた方は確かにあなた方の信仰後、不信仰を犯したのだから。たとえ、われら*があなた方の内のある集団を大目に見るにしても、われら*は(別の)集団のことは罰するのだ。というのも、彼らは罪悪者だったからである」。
偽信者*の男たちと偽信者*の女たちは、同じ穴のむじなである。彼らは悪事を命じて善事を禁じ¹、(アッラー*の道ゆえの施しから)その手を引っ込める。彼らがアッラー*を忘れたゆえに、かれも彼らのことをお忘れになった²のだ。本当に偽信者*たちこそは、(アッラー*とその使徒*への信仰から逸脱した、)放逸な者たちなのである。
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1 この「悪事」と「善事」については、イムラーン家章104の訳注を参照。 2 彼らがアッラー*の想起を忘れたため、アッラー*は彼らをご慈悲から遠ざけられた(ムヤッサル197頁参照)。または、彼らがアッラー*のご命令を放ったらかしにしたため、アッラー*は彼らを疑念の中に放ったらかしにされた(アル=クルトゥビー8:199参照)。同種の表現法については、雌牛章15の訳注も参照。
アッラー*は偽信者*の男たち、偽信者*の女たち、不信仰者*たちに、永遠に留まることになる地獄の業火を約束された。それだけで、彼ら(の罰)には十分。アッラー*は彼らを呪われ給い¹、彼らには永遠の懲罰がある。
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1 「アッラー*の呪い」に関しては、雌牛章88の訳注を参照。
(偽信者*たちよ、あなた方は、)あなた方以前の(不信仰)者*たちと同様である。彼らはあなた方より力が強く、より多くの財産と子供を有し、(現世での)その取り分を堪能していた。またあなた方も、あなた方以前の者たちが(現世での)その取り分を堪能ように、自分たちの(現世での)取り分を堪能し、彼らが(アッラー*に対する嘘という)戯言を喋った。それらの者たちは、その行いが、現世と来世において台無しになってしまったのだ。そして彼らこそは、損失者なのである。
彼らのもとには、ヌーフ*の民、アード*、サムード*、イブラーヒーム*の民、マドゥヤン*の仲間たち、転覆した、町々¹といった、それ以前の者たちの使徒*たちの知らせが届かなかったのか?彼らの使徒*たちは、彼らのもとに(その正しさを証明する)明証を携えて到来した(が、彼らは使徒*たちを嘘つき呼ばわりしたので、アッラー*に滅ぼされたのだ)。アッラー*が彼らに不正*を働くなどということは、あるべくもなかった。しかし彼らが、自分自身に不正*を働いていたのである。
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1 「転覆した町々」とは、複数の町に居住していた、ルート*の民のこと。あるいはそれらの中心であった、サムードの町のこと(イブン・カスィール4:174参照)。この明証の由来、およびそれらが滅ぼされた時の様子については、フード*章82-83、アル=ヒジュル章73-74を参照。
また、信仰者の男たちと信仰者の女たちは、互いに盟友である。彼らは善事を命じて悪事を禁じ¹、礼拝を遵守*し、浄財*を施し、アッラー*とその使徒*に従う。それらの者たち、アッラー*は彼らに、ご慈悲をおかけになるのだ。本当にアッラー*は偉力ならびない*お方、英知あふれる*お方なのだから。
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1 「善事を命じて…」については、イムラーン家章104の訳注を参照。
アッラー*は信仰者の男たちと信仰者の女たちに、彼らが永遠に留まることになる、その下から河川が流れる楽園を約束された。また、永久の楽園の麗しき住まいも(約束された)。そしてアッラー*のご満悦は、更に大きい(享楽)。それこそはこの上ない勝利なのだ。
預言者*よ、不信仰者*たちと偽信者*らに対して努力奮闘し、彼らに厳しくあれ。彼らの住処は地獄なのだ。そしてその行き先は、何と醜悪であろうか。
彼ら(偽信者*たち)は、自分たちは(預言者*とその教友*たちの悪口など)言っていない¹と言って、アッラー*に誓う。彼らは確かに不信仰の言葉を口にし、服従(イスラーム*)後に不信仰に陥り、彼らが(結局は)達成できなかったこと²を意図したのである。彼らは(使徒*を)咎めたが、実にアッラー*とその使徒*はその恩寵により、彼らを富ませて下さったに外ならないのである³。もし彼らが悔悟するなら、それが彼らにとってより善いのである。けれども、もし背き去るのであれば、かれ(アッラー*)は現世と来世において彼らを痛ましい懲罰で罰され給う。そして彼らには地上において、いかなる庇護者も援助者もないのだ。
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1 この背景にある出来事については、アーヤ*64-66を参照。 2 つまり、アッラー*の使徒*に危害を加えること(ムヤッサル199頁参照)。 3 偽信者*に代表されるある種の人々は、アッラー*が預言者*ムハンマド*にお授けになった恩恵や祝福の数々を享受したにも関わらず、恩知らずな態度を変えなかった(ムヤッサル199頁参照)。
彼ら(偽信者*たち)の中には、アッラー*に対して(このように誓って)約束した者がある。「もしも、かれ(アッラー*)がそのご恩寵から私たちに授けて下さったら、私たちは必ずや(そこから)施し、必ずや正しい者*たちの仲間入りをしましょう」。
そして、かれがそのご恩寵から彼らにお授けになれば、彼らはそれを出し惜しみし、(イスラーム*から)身を翻して背を向けたのである。
それでかれ(アッラー*)は、彼らがかれと拝謁することになる(復活の)日*まで、その心の中の偽信(の増加)を、彼らの(行いの)帰結とされた。それというのも彼らがアッラー*に対して、かれに約束したことを破り、嘘をついていたためなのである。
一体、彼らは知らなかったのか?アッラー*が彼らの秘密も密談もご存知であり、アッラー*が不可視の世界*を熟知されるお方であるということを?
(彼らは)信仰者たちの内、率先して施す(豊かな)者たちや、自分たちの能力分しか(施し物を)見出せない(貧しい)者たちのことをけなし、彼らを嘲笑する者たち¹。アッラー*が、彼らのことを嘲笑された²のである。そして彼らには、痛ましい懲罰があるのだ。
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1 沢山のものを施す者には「見せびらかしだ」と言い、僅かなものを施す者には「アッラー*はこんな施しなど、必要とはされない」などと言った者たちがいたのだという(アル=ブハーリー1415参照)。 2 この表現については、雌牛章15の訳注を参照。
(使徒*よ、)彼らのために(アッラー*に)お赦しを乞うがいい。あるいは、彼らのためにお赦しを乞うのではない。たとえ、あなたが彼らのために七十回¹赦しを乞うても、アッラー*は決して彼らをお赦しにはなるまい。それというのも、彼らはアッラー*とその使徒*を否定したからである。アッラー*は、放逸な民をお導きにはならないのだ。
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1 この「七十回」は文字通りの意味ではなく、「単に数の多さを示す表現である」という説と、文字通りの意味である、という説がある(イブン・カスィール4:188参照)。
(タブークの戦い*へと出征せず、)アッラー*の使徒*に反した状態で¹(マディーナ*に)居残らされた(偽信)者*たち²は、その居残りに有頂天になった。そして、彼らは自分たちの財産と生命をかけてアッラー*の道に努力奮闘することを嫌い、(互いにこう)言ったのだ。「暑さの中、出征することはないぞ」。(使徒*よ、)言ってやるがいい。「地獄の業火は、もっと熱さが厳しいぞ」。もし彼らが、(そのことを)理解していたならば。
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1 一説には、「アッラー*の使徒*の後方に」という意味(アル=バガウィー2:374参照)。 2 「自ら居残った者たち」でなく「居残らされた者たち」と表現されているのは、一説に、もし彼らが共
に出征すれば悪事や面倒を起こすことになるのを知っていた預言者*が、彼らの出征を禁じたからである(アッ=ラーズィー6:113参照)。
ならば、彼らが稼いでいたもの(不信仰)の報いゆえ、彼らを(現世で)少し笑わせておき、(地獄で)沢山泣かせておくがよい。
(使徒*よ、)アッラー*があなたを、彼ら(偽信者*たち)の内の一派のもとへと(タブークの戦い*から)帰還させ給い、彼らがあなたに(次の戦いの)出征の許可を請うたら、言ってやるのだ。「あなた方は断じて、私と共に出征することはないし、私と共に敵と戦うこともあるまい。本当にあなた方は最初、(出征せずに)居残ることに満足したのだから。ならば、後方に居残る者たち¹と共に居残っているがよい」。
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1 「後方に居残る者たち」の解釈には、「後方に居残る偽信者*たち」「女性や弱い男性たち」「放逸な者たち」といった説がある(アル=クルトゥビー8:218参照)。
また(使徒*よ)、彼ら(偽信者*たち)の内の他界した誰かのために、断じて祈ってはならない。また(祈願のために)、その墓に立ってもならない。本当に彼らはアッラー*とその使徒*を否定したのであり、放逸な(偽信)者*として死んだのだから。
そして(預言者*よ、われら*が彼らに与えた)その財産や子供に、心引かれてはならない。実にアッラー*はそれらによって、現世で彼らを罰し給い¹、彼らが不信仰者*として事切れることを、まさにお望みなのだから。
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1 アーヤ*55の同様の件(くだり)の訳注も参照。
また、アッラー*を信じ、その使徒*と共に努力奮闘せよ、というスーラ*が下った時、彼ら(偽信者*たち)の内の裕福な者たちはあなたに、(出征せずに居残る)許しを請い、(こう)言った。「私たちを放っておいて下さい。私たちは、居残る者たち¹と一緒にいます」。
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1 この「居残る者たち」については、アーヤ*46の訳注を参照。
彼ら(偽信者*たち)は、(出征せずに)後方に居残る者たち¹と共にあることに満足し、その心は(偽の信仰と居残りゆえに)塞がれた。ゆえに彼らは、理解することがない。
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1 「後方に居残る者たち」については、アーヤ*46「居残る者たち」の訳注を参照。
しかし使徒*と、彼と共に信仰する者たちは、その財産と生命をかけて努力奮闘した。それらの者たち、彼らには善きものがあり¹、それらの者たちこそは成功者なのである。
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1 現世では勝利や戦利品*など、そして来世においてはこの上ない栄誉を得る(ムヤッサル201頁参照)。
アッラー*は、彼らのために、その下から河川が流れる楽園をご用意なされた。彼らはそこに永遠に留まる。それは、この上ない勝利なのだ。
また(出征の免除の)許しをもらうため、ベドウィンの弁解者たち¹がやって来た。そしてアッラー*とその使徒*に嘘をついた者たちが、(後方に)居残ったのである。彼らの内、不信仰だった者*たちには、(現世と来世において)痛ましい懲罰が襲いかかるであろう。
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1 これは、マディーナ*近郊にいたベドウィンたちの内、マディーナ*にやって来て、預言者*に自分たちの弱さと無力さを訴(うった)え、出征しなくてもよい許しを請うた者たちのこと。このアーヤ*の「居残った」者たちは、正当な言い訳のなかった別の民であるとされる(ムヤッサル201頁参照)。
弱者にも、病人にも(出征に)費やすものを見出せない者にも、(出征せずに居残ることの)罪はない。もし、アッラー*とその使徒*に誠実であるのなら。善を尽くす者¹たちに、(罰される)筋合いはないのである。アッラー*は赦し深いお方、慈愛深い*お方。
また(使徒*よ、)自分たちを(出征のため、乗用の家畜に)乗せてくれるようにと、あなたの所にやって来たものの、あなたが「あなた方を乗せる(余分な)もの(家畜)はない」と言った者たちにも(、罪はない)。彼らは(出征のために)費やすものを見出せずに悲しみ、その目からは涙を溢れ出させながら、引き返して行ったのである。
咎められるべきは、裕福であるにも関わらず、(出征せずに居残る)許しをあなたに乞う(偽信)者*たちにこそある。彼らは、後方に居残る者たち¹と共にあることに満足し、アッラー*は彼らの心を(偽の信仰ゆえに)塞がれた。それで彼らは、(自分たちの悪い結末を)知ることもないのだ。
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1 「後方に居残る者たち」については、アーヤ*46「居残る者たち」の訳注を参照。
(信仰者たちよ、)あなた方が(タブークの戦い*から)彼らのもとに戻って来た時、彼らはあなた方に(嘘の)言い訳をする。(使徒*よ、)言ってやるのだ。「言い訳するのではない。私たちはあなた方のことを、信じないのだから。アッラー*は、あなた方の消息の一部を、私たちに確かにお告げになったのだ。アッラー*はあなた方の行いをご覧になり、その使徒*もまた(そうする)¹。それからあなた方は不可視の世界*も現象界²もご存知のお方の御許へと返され、かれはあなた方が(現世で)行っていたことについて、あなた方にお告げになる」。
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1 悔悟するかどうか、ご覧になると言う事(ムヤッサル202頁参照)。 2 「現象界」については、家畜章73の訳注を参照。
あなた方が彼ら(偽信者*たち)のもとに帰れば、彼らはあなた方が(問い詰めることなく)自分たちから離れ去るようにと、あなた方に対し(嘘の言い訳で)アッラー*に誓うであろう。ならば、彼らから離れ去るがよい。彼らは穢れ¹なのであり、彼らの住処は、彼らが稼いでいたことによる報いゆえの地獄なのだから。
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1 この「穢れ」については、アーヤ*28「不浄」の訳注も参照。
彼ら(偽信者*たち)は、あなた方が自分たちに満足してくれるようにと、あなた方に対し、(偽って)誓う。そして、たとえあなた方が彼らに満足したとしても、(そんなものは彼らには役には立たない、)本当にアッラー*が放逸な民を喜ばれることはないのだから。
ベドウィンたち¹は不信仰と偽信において(町の民)よりひどく、アッラー*がその使徒*に下された決まりについて無知なのも、より当然なのだ²。アッラー*は全知者、英知あふれる*お方である。
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1 砂漠の民のこと。ここではベドウィンの内の偽信者*を指す(アル=クルトゥビー8:231参照)。 2 これはベドウィンが粗暴(そぼう)かつ頑固で、知識や学者、訓戒や教訓の場から疎遠(そえん)であるため(ムヤッサル202頁参照)。アーヤ*98,99も参照。
また、ベドウィンたちの中には自らが費やすもの¹を罰金ととらえ、あなた方に(状況の)暗転を待ち望んでいる者がいる。彼らの方にこそ、悪しき暗転があるのだ。アッラー*はよくお聴きになるお方、全知者であられる。
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1 不信仰者*との戦いや、ムスリム*への援助、アッラー*がお勧めになる物事などにおける出費のこと(アッ=タバリー5:4085参照)。
またベドウィンたちの中にも、アッラー*と最後の日*を信じ、自らが費やすものをアッラー*の御許での(かれへの)お近づきと、(自分への)使徒*の祈願(の手段)としてとらえる者たちがいる。本当にそれは、彼らにとって(アッラー*への)お近づき(の手段)なのではないか。アッラー*は彼らを、(天国という)そのご慈悲の中にお入れになろう。本当にアッラー*は赦し深いお方、慈愛深い*お方なのだ。
ムハージルーン*とアンサール*の内、先人の先駆け¹たちと、善を尽くして彼らに従った者²たち、アッラー*は彼らをお喜びになり、彼らもアッラー*に満足する。そしてかれ(アッラー*)は彼らのために、その下を河川が流れる楽園を用意されている。彼らはそこに、ずっと永遠に留まる。それは、この上ない勝利なのだ。³
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1 アッラー*とその使徒*への信仰を早くから受け入れた者たちの内、自分たちの民や家族を離れて移住*したムハージルーン*と、不信仰者*に対して彼らを援助したアンサール*のこと(ムヤッサル203頁参照)。 2 アッラー*のご満悦を求めて、信仰と言行において善をつくし、彼ら先人たちの道に続く者たちのこと(ムヤッサル203頁参照)。蜜蜂章128の訳注も参照。 3 このアーヤ*にもあるように、教友*たちへの敬意は信仰の基本の一つである(前掲書、同頁参照)。
またベドウィンたちの内、あなた方(マディーナ*の住民)の周りにいる者たちの中には、偽信者*がいる。そして、マディーナの住民の中にも(同様に)。彼らは偽の信仰にしがみついて(、放埓さを更に上乗せして)いるのだ。(使徒*よ、)あなたは彼らのことを知らない。(しかし)われら*は、彼らのことを知っている。われらは彼らを、二度に亘って罰してやろう¹。それから彼らは(復活の日)、この上ない懲罰へと戻されることになるのだ。
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1 この「二度の懲罰」の一つ目は、殺害、拘束、彼らの秘密の暴露(ばくろ)など現世におけるもので、二つ目は死後、墓の中での懲罰(信仰者たち章100「障壁」の訳注も参照)のことであるとされる(前掲書、同頁参照)。
また(マディーナ*の周りのベドウィンと、マディーナ*の住民の中には、)自分たちの罪を認めた、別の者たち¹がいる。彼らは正しい行い*と、別の悪(い行い)²を混在させた。恐らくアッラー*は、彼らの悔悟を受け入れて下さるであろう。本当にアッラー*は赦し深いお方、慈愛深い*お方なのだから。
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1 一説にこのアーヤ*は、タブークの戦い*に出征せずに居残ったが、預言者*たちがマディーナ*に帰還した際に自分たちをマスジド*の柱にくくりつけ、預言者*が赦してくれるまではそのままでいる、と誓った者たちについて下った。同様にどんなに罪深い者でも、悔悟する信仰者は赦される(イブン・カスィール4:206参照)。 2 この「正しい行い*」は、悔悟、後悔、罪の認識などのこと。「悪い行い」は使徒*の命令に背いて出征しなかったことを始めとした、その外全ての悪行(ムヤッサル203頁参照)。
(預言者*よ、)彼ら¹の財産から施しを取るがよい。あなたはそれで彼らを清め、育んでやる²。そして彼らのために、(罪の赦しを)祈ってやるのだ。本当にあなたの祈願は、彼らにとって(心の)静寂なのだから。アッラー*はよく聴かれるお方、全知者であられる。
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1 この「彼ら」とは、アーヤ*102の「別の者たち」のこと(前掲書、同頁参照)。 2 彼らの善き品性と正しい行い*を育み、その現世と来世における褒美を上乗せし、その財産を増やしてやる(頻出名・用語解説「浄財*」も参照)、ということ(アッ=サァディー350頁参照)。
一体、彼らはアッラー*こそが、その僕たちから悔悟をお受け入れになり、施しをお受け取りになることを知らないのか?そしてアッラー*こそが、よく悔悟をお受け入れになる*お方、慈愛深き*お方であることを?
(預言者*よ、彼らに)言ってやるのだ。「(アッラー*がお喜びになることを、)行え。アッラー*は、あなた方の行いをご覧になるだろうから。また、その使徒*と信仰者たちも(あなた方の行いを見るだろう)。そしてあなた方は、不可視の世界*も現象界¹もご存知のお方の御許へと返され、かれはあなた方が(現世で)行っていたことについて、あなた方にお告げになろう」。
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1 「現象界」については、家畜章73の訳注を参照。
また(出征の命令に応じなかった者たちの内、その処分について)、アッラー*のご裁決を見合されている別の者たち¹、かれ(アッラー*)は彼らを罰されるか、あるいはその悔悟を受け入れられるかされるであろう。アッラー*は全知者、英知あふれる*お方である。
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1 これはアーヤ*102で言及されている者たちとは別で、アーヤ*118の訳注に言及されている三人のことである、とされる(ムヤッサル203頁参照)。
また(出征の命令に応じなかった者たちの内には)、マスジド*を(信仰者たちへの)害悪と不信仰、信仰者たちの間の分断と、(それ)以前にアッラー*とその使徒*に戦いを仕掛けた者を待ち受けるためのものとする者たちがいる¹。彼らは実に、(こう)誓うのだ。「私たちは(その建設において)、善いことを望んだだけなのです」。アッラー*は本当に彼らが、まさしく嘘つきであることを証言し給う。
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1 マディーナ*には、ムスリム*たちがそこに移住*した後、彼らを憎み、様々な策謀(さくぼう)を計画した、アブー・アーミル・アッ=ラーヒブという男がいた。しかしムスリム*たちが勢力を強めた後、彼は「ローマ軍を従えてマディーナ*を攻撃するから、砦(とりで)を用意しておくように」とマディーナ*の偽信者*たちに約束し、ローマ帝国に亡命する。それに応じて偽信者*らは、ムスリム*軍がタブークに出征する前、マディーナ*のクバー・マスジド(アーヤ*108「マスジド*」の訳注も参照)近くに彼らのマスジド*を建てた。雨夜などにそこに行けない人々のため、という名目だったが、実際は礼拝者たちの分断やムスリム*に対する策謀の場とすることを目的としていた。預言者*はそこで礼拝するよう頼まれたが、タブークの戦い*からマディーナ*に戻る途中、このアーヤ*が啓示された。結局そのマスジドは、破壊された(イブン・カスィール4:210-212参照)。
(預言者*よ、)そこには決して(礼拝のため)立つのではない。最初の日から敬虔さに基づいて築かれたマスジド¹こそは、あなたが(礼拝に)立つにふさわしいのだから。そこには、自らをよく清めること²を愛する者たちがいる。アッラー*は、自らをよく清める者をお好みになるのだ。
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1 アーヤ*107の訳注にもあるように、これはイスラーム*史上初のマスジド*であるクバー・マスジドのことであるとされる。イスラーム*において二番目に徳がある預言者*マスジド*が、クバー・マスジドよりも礼拝するにふさわしい場所であることは、言うまでもない(ムヤッサル204頁参照)。 2 水で身の汚れを清め、罪の赦しを乞うことと敬虔さ*により、心の罪を清めること(前掲書、同頁参照)。
一体、アッラー*への畏れ*の念と、かれのお喜び(を追求すること)に基づいてその建物を築く者の方が善いのか、それとも崩れかかった崖のほとりにその建物を築き、それと一緒に地獄の業火へと崩れ落ちてしまう者(の方が善いの)か?アッラー*は、不正*者である民をお導きにはならないのだ。
彼ら(偽信者*たち)が建てたその建物は、彼らの心がばらばらに張り裂けるまで¹、彼らの心の中の疑惑であり続ける。アッラー*は全知者、英知あふれるお方である。
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1 「心がばらばらに張り裂けるまで」の解釈には、「殺されるまで」「死ぬまで」「とても後悔して、アッラー*に悔悟し、かれを非常に恐れるようになるまで」といった解釈がある(ムヤッサル294頁参照)。
本当にアッラー*は信仰者たちから、天国と引き換えに、彼らの命と財産を買い取られた。彼らはアッラー*の道において戦い、殺し、殺されるのである。トーラー*と福音*とクルアーン*における、その真のお約束ーーアッラー*よりも自らの約束に忠実なお方があろうか?ーー。ならば、あなた方が契約した自分たちの取引に心躍らせよ。それこそは、この上ない勝利なのだ。
(彼ら信仰者たちとは、)悔悟する者たち、崇拝*行為に専念する者たち、(アッラー*を)称賛*する者たち、斎戒*する¹者たち、ルクーゥ*する者たち、サジダ*する者たち、善事を命じる者たち、悪事を禁じる²者たち、アッラー*の決まりを守る³者たち。(預言者*よ、これらの)信仰者たちに吉報を伝えよ。
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1 外にも「アッラー*の道において奮闘する」「知識を求める」などの解釈がある(アル=バガウィー2:392参照)。原語「サーハ」にはそもそも、「移動する」「旅行する」といった意味があり、そこから一般に「イスラーム*において賞讃すべき旅をする」ことを指すのだ、という(イブン・アーシュール11:41参照)。 2 「善事を命じる」「悪事を禁じる」については、イムラーン家章104の訳注を参照。 3 アッラー*から課せられた義務を果たし、命じられたことを行い、禁じられたことを避(さ)け、アッラー*への服従に従事し、かれがお定めになった掟を破らないこと(ムヤッサル205頁参照)。
預言者*と、信仰する者たちにとって、シルク*の徒のため(アッラー*に罪の)お赦しを乞うことなど、あってはならない。たとえ彼らが(自分たちの)近親の者であろうとも、火獄の徒であることが彼らに明白になった後には¹(、そうしてはならない)。
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1 つまり、シルク*を犯したまま死んだことで、「火獄の徒」であることが確定したら、ということ(前掲書、同頁参照)。婦人章48も参照。
イブラーヒーム*が(、シルク*の徒であった)自分の父のため、(アッラー*に罪の)お赦しを乞うたのは、彼(イブラーヒーム*)が彼(父)にした約束¹ゆえに過ぎなかった。そして彼(父)が、アッラー*の敵であることが明らかになった時、彼(イブラーヒーム*)は彼と決別したのである。本当にイブラーヒーム*はまさしく、哀願する者²、寛容な者だったのだから。
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1 イブラーヒーム*は父がムスリム*になることを望むがゆえに、彼の罪の赦しを乞うことを、彼に約束した。マルヤム*章47、試問される女章4も参照(アル=バガウィー2:395参照)。 2 「哀願する者」という訳をあてた語「アウワーフ」には、「よく祈る者」「慈愛深い者」「確信する者」「よくアッラー*を唱念する者」「よく嘆く者」「おそれ畏(かしこ)まり、恭順(雌牛章45参照)な者」など、様々な解釈がある(アル=クルトゥビー8:275参照)。
そしてアッラー*は、ある民をお導きになった後、彼らが保身するためのことを明らかにされない限りは、彼らを迷わせ給うことはない¹。本当にアッラー*は、全てのことをご存知のお方なのだから。
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1 つまりアッラー*は、まだ明白に禁じられてもいない物事(ここでは特に、シルク*の徒として亡くなった者の罪の赦しを乞うこと)を行ってしまった者に対して、「迷妄(めいもう)」の烙印(らくいん)を押されることはない(アッ=タバリー5:4141-4142参照)。
本当にアッラー*、かれにこそ、諸天と大地の王権は属する。かれは、(お望みの者に)生をお授けになり、(お望みの者に)死をお授けになる。そしてあなた方にはアッラー*の外に、いかなる庇護者*も援助者もない。
アッラー*は確かに、預言者*と、(タブークの戦い*という)苦難の時¹に彼(預言者*)に従ったムハージルーン*とアンサール*の悔悟を、彼らの一派の心が傾きかけた²後、お受け入れになった。それから、かれは彼らの悔悟をお受け入れになったのである。本当にかれは、彼らに対してこそ、哀れみ深い*お方、慈愛深い*お方なのだ。
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1 タブークの戦い*は真夏の酷暑(こくしょ)、食料や水の不足、旅行用のラクダの欠如などが重なった、大変厳しい遠征だった(ムヤッサル205頁参照)。 2 「心が傾きかけた」のは、「信仰における確固さから」だとか、「困窮と苦難ゆえに(タブークの)戦いへの出征から」だとかいう解釈がある(イブン・ジュザイ1:372参照)。
そして(出征せず)後方に残された三人¹に対しても(、アッラー*はその悔悟をお行け入れになった)。やがて、大地がその広さにも関わらず彼らにとって狭くなって²、彼らに心苦しいものとなり、彼らがアッラー*(のお怒り)からの逃げ場所は、かれご自身(に赦しを乞うこと)しかないことを確信した時、(彼らはアッラー*に悔悟し、)それからかれ(アッラー*)は、彼らが(その後もしっかりと)悔悟するよう、彼らの悔悟をお受け入れになった。本当にアッラー*こそは、よく悔悟をお受け入れになる*お方、慈愛深い*お方なのだから。
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1 カァブ・ブン・マーリク、ヒラール・ブン・ウマイヤ、ムラーラ・ブン・アッ=ラビーゥの三人のこと。ムスリム*軍がタブークから凱旋(がいせん)した後、出征の命令に応じなかった多くの者は言い訳をし、その言い訳が真実であると誓った(アーヤ*94以降を参照)。だがこの三人は嘘の言い訳をすることを拒んだので、彼らの処分についてのアッラー*のご命令が下るまで、ムスリム*たちから村八分にされることになった。彼らの悔悟が受け入れられたとの啓示が下ったのは、村八分が始まってから五十日目の夜明けのことだった(アル=ブハーリー4418参照)。 2 この表現については、アーヤ*25の訳注を参照。
信仰する者たちよ、アッラー*を畏れ*、正直な者たち¹と共にあれ。
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1 「正直な者たち」とは、言葉と行いが矛盾している偽信者のようではなく、アッラー*への信仰において正直で、その言葉を行いで実証するような者のこと(アッ=タバリー5:4151参照)。
マディーナ*の住民とその周辺のベドウィンたちは、アッラー*の使徒*をよそに(出征せず)後方に留まったり、彼(使徒*)よりも自分自身を優先させたりすべきではない¹。というのも、アッラー*の道において彼らが喉の乾きや、疲労、空腹に襲われたり、(交戦状態にある)不信仰者*たちを憤らせる土地に足を踏み入れたり、敵に被害を与えたりすれば、それにより正しい行い*(の褒美)が、彼らのために必ず記録されるからである。本当にアッラー*は、善を尽くす者²たちの褒美を、無駄にはされないのだから。
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1 預言者*が大変な目にあっているのに、自分たちは楽をしていてはならない、ということ(ムヤッサル206頁参照)。 2 「善を尽くす者」については、蜜蜂章128の訳注を参照。
また(アッラー*の道において、)費用を少し、あるいは多く出費したり、(行軍して)谷一つ越えたりすれば、彼らのために(その褒美が)記録されないことはないのである。(それは)アッラー*が彼らに、彼らが行っていた最善のもの(行い)でお報いになるためなのだ。
また信仰者たちは、総動員で出征すべきではない。どうして彼らの内の各集団から、(必要に見合った人数だけの)一団が出征しないのか?(それは出征せずに留まる者たちが)宗教において理解を深め、そして(出征していた)その民が自分たちのもとに戻って来た時、彼らに警告するため¹。(それは)彼らが、(アッラー*の懲罰に対して)用心するようになるためなのだ。
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1 つまりクルアーン、スンナ、義務行為、法規定などを学び、遠征軍が戻って来たら、彼らの不在中に啓示されたものを伝えること。尚、「宗教において理解を深め」る者たちが、「出征した人々」であり、「警告」される側が、「出征せずに留まる者たち」という説など、他の解釈の仕方もある(アル=バガウィー2:403-404参照)。
信仰する者たちよ、不信仰者*たちの内、あなた方に隣接する者たちと戦え¹。そして彼らに、あなた方にある強靭さを知らしめよ。アッラー*こそは(その支持と援助によって)、敬虔*な者たちと共にあることを知るのだ。
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1 この「隣接する不信仰者*たち」とは、マディーナ*やハイバルのユダヤ教徒*たちとか、当時のシャーム地方(現在のシリア、パレスチナ周辺地域)を支配していたローマ人たちのことであるとされる(前掲書2:406参照)。「不信仰者*との戦い」については、雌牛章190、悔悟章36とその訳注も参照。
スーラ*が下ると、彼ら(偽信者*たち)の内のある者は言う。「一体あなた方の内の誰が、これで(更なる)信仰心を上乗せするというのか?」信仰する者たちこそは、(スーラ*の啓示によって、更なる)信仰心を上乗せするのである。そして彼らは、(授けられた信仰心に)心躍らせるのだ。
また、心に病がある者たち¹はといえば(スーラ*の啓示により)、彼らの穢れ²の上に更なる穢れを上乗せし、不信仰者*として死んでしまったのである。
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1 偽信者*や、イスラーム*への疑念が強い者たちのこととされる(ムヤッサル207頁参照)。 2 この「穢れ」には、「疑念」「不信仰」「旱魃(かんばつ)」「戦い」「偽の信仰が露(あら)わになること」などの諸説がある(アル=バガウィー2:407参照)。
一体、彼ら(偽信者*たち)は、自分たちが毎年一度や二度は、試練¹にかけられるということを知らないのか?その後に及んで、彼らは悔悟することもなく、教訓を得ることもないのだ。
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1 この「試練」の解釈には、「病気や逆境」「旱魃(かんばつ)「戦い」「偽の信仰が露(あら)わになること」などの諸説がある(アル=バガウィー2:407参照)。
また、スーラ*¹が下れば、彼ら(偽信者*たち)は互いに顔を見合わせ(て、互いにこう言っ)た。「(今、ムハンマド*のもとを立ち去ったとしても、)誰があなた方を目にすることがあろうか?」それから(誰の目にもつかなければ、)彼らは立ち去ってしまう。アッラー*が彼らの心を、彼らが理解しない民であるゆえに、(信仰から)お逸らしになったのだ。
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1 ここでは特に、偽信者*たちの問題や行動を指摘するスーラ*のこと(ムヤッサル207頁参照)。
あなた方自身の内から一人の使徒*(ムハンマド*)が、確かにあなた方のもとに到来した。あなた方が苦しむのは、彼にとって辛いこと。「彼は)あなた方に対して懸命で¹、信仰者たちにこそ哀れみ深く、慈愛深いのだ。
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1 あなた方の導きと、諸事の改善に「懸命」であるということ(ムヤッサル297頁参照)。
(使徒*よ、)それで、もし彼ら(不信仰者たちと偽信者*たち)が(あなたへの信仰から)背くのであれば、言ってやるがよい。「私には、アッラー*だけで十分。かれ以外に(真に)崇拝*すべきものはなくーー私は、かれにこそ全てを委ねた*ーー、かれは偉大なる御座¹の主であられるお方」。
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1 「御座」については、高壁章54の訳注を参照。
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