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アリフ・ラーム・ラー¹。それは、解明する啓典²の御徴(アーヤ*)。
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1 これらの文字については、頻出名・用語解説「クルアーンの冒頭に現れる文字群*」を参照。 2 「解明する啓典」とは、正しい導きを始め、物事の合法性や非合法性など、あらゆることを解明する啓典、つまりクルアーン*のこと(アッ=タバリー6:4461-4462参照)。
本当にわれら*はそれを、あなた方が(その意味を)弁えるべく、アラビア語のクルアーン*として下した。
(使徒*よ、)われら*はこのクルアーン*をあなたに啓示することで、あなたに最良の物語を話して聞かせる。実にあなたはそれ以前、(このような話には、)無頓着な者の類いだったのだが。
ユースフ*が、自分の父親(ヤァクーブ*)に(こう)言った時のこと。「お父さん、本当に私は(夢で)十一個の星と、太陽と、月を見ました。私はかれら¹が、私にサジダ*するのを見たのです」。
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1 「サジダ*」という、知力を備えた存在の行為ゆえ、これらの物質が「かれら」と表現されている(アル=バガウィー2:475参照)。また、十一個の星はユースフ*の兄弟を、太陽と月は彼の両親を暗示していると言われる。詳しくはアーヤ*100を参照(イブン・カスィール4:369参照)。
彼(ヤァクーブ*)は、言った。「我が息子よ、お前の夢を兄さんたちに話してはならない。そうすれば彼らは、お前に悪だくみをする。本当にシャイターン*は、人間への紛れもない敵なのだから。
そして(、お前に正夢を見せて下さったのと)同様に、お前の主*はお前を選び抜かれ、お前に話の解釈¹をお教えになり、お前とヤァクーブ*の一族にその恩恵を全うされる。ちょうどかれが以前、お前の二人の祖イブラーヒーム*とイスハーク*に対してそれを全うされたように。本当にお前の主*は、全知者、英知あふれる*お方」。
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1 「話の解釈」とは夢の解釈のことであるとされるが、夢だけではなくもっと広い範囲の解釈能力のことである、とも言われる(イブン・アティーヤ3:220参照)。
ユースフ*とその兄弟(の間に起きた話)には、確かに(それについて)尋ねる者たちにとっての御徴¹があった、
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1 この「御徴」とは、アッラー*の御力と英知を示す証拠のこと(ムヤッサル236頁参照)。
彼ら(ユースフ*の兄たち)が(密談して、こう)言った時のこと(を思い起こせ)。「本当にユースフ*とあいつの弟¹は、私たちよりもお父さんに愛されている。私たちは多勢であるというのに。本当にお父さんは全く、紛れもない迷妄の中におられる。
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1 ユースフの弟の名はビンヤーミーン(ベニヤミン)。この二人は他の十人の兄たちよりも年少で、彼らとは母親を異にしていたという(イブン・アティーヤ3:221参照)。
ユースフ*を殺してしまえ。それか、(どこか辺鄙な)土地に放り投げてしまえ。(そうすれば、)お父さんの顔はあなた方だけに向けられるし、あなた方はその後で正しい民となる¹のだ」。
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1 アッラー*に悔悟し、その罪のお許しを乞う、ということ(ムヤッサル236頁参照)。
彼らの内にある者が、言った。「ユースフ*を殺さず、井戸の奥底に投げ入れてしまえ。(そうすれば、旅行中の)通行人たちが、あいつを拾ってくれるだろう。もし、あなた方がそうするのであれば、だが」。
(そうすることを決定した後、)彼らは言った。「お父さん、あなたが私たちにユースフ*を任せて下さらないのは、どういうわけですか?本当に私たちは、彼に対して実に親身ですのに。
彼を明日、私たちと一緒に(遊牧地へ)送ってください。(そうすれば)彼は満喫し¹、遊ぶでしょう。本当に私たちは、まさしく彼の保護者なのです」。
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1 「満喫(ラトゥウ)」とは語源的に、「快楽を十分に味わうこと」であり、ここでは楽しみ、食べ、遊び、羽を伸ばすことを指す(アル=バガウィー2:479参照)。
彼(ヤァクーブ*)は言った。「本当に私は、お前たちが彼を連れて行くことがひどく悲しい。そしてお前たちが彼に不注意になっている時に、狼が彼を食べてしまうのではないかと怖れているのだ」。
彼らは言った。「私たちは多勢であるというのに、もしも狼が彼を食べてしまうことがあれば、本当にその時は、私たちはまさしく(役立たずの)損失者です」。
それで彼らが彼(ユースフ*)を連れて行き、彼を井戸の奥底に投げ入れることで一致した時(、彼らはそれを実行した)。われら*は彼(ユースフ*)に、(こう)啓示した。「あなたは必ずや(将来)、彼らの(策謀した)この事について、彼らに語り聞かせることになろう。彼らは(その時、あなたがユースフ*であることに)気付かないのだが」。
彼ら(ユースフ*の兄たち)は夜、泣きながら、自分たちの父親のもとにやって来た。
彼らは言った。「お父さん、本当に私たちは競争¹しに行き、ユースフ*を荷物の所に残しておきました。すると、狼が彼を食べてしまったのです。あなたは私たちのことを信用してはくれないでしょう。たとえ私たちが、正直者であったとしても」。
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1 「競争」とは、かけっこや弓矢での競争のこととされる(ムヤッサル237頁参照)。
そして彼らは、偽物の血の付いた彼の上着を持って来た¹。彼(ヤァクーブ*)は言った。「いや、お前たち自身の心が(その醜悪な)事を、お前たちに惑わせて促したのである。(我が忍耐*は、)よき忍耐*²。アッラー*(こそ)は、お前たちの言うことに対して(私から)援助を乞われるべきお方である」。
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1 彼らはそれを、自分たちの正直さの証拠としたかったが、それは逆に彼らへの反証となった。というのもそれは、破(やぶ)き裂かれてはいなかったからである(前掲書、同頁参照)。 2 「よき忍耐*」とは、「動じたり、不平を言ったりせずに忍耐すること」(アル=クルトゥビー9:152参照)であるとされる。
こうして(井戸に、旅行中の)通行人たち¹がやって来た。彼らは水汲みの者を(井戸に)やり、彼はその水桶を(井戸の中に)垂らした。(そしてユースフ*をそれに掴まって井戸の外に出てくると、)彼は言った。「おお、吉報よ!これは(素晴らしい)男の子だ²」。彼らは彼のことを、商品として秘密にした³。アッラー*は彼らが(ユースフ*に対して)行うことを、ご存知のお方であられる。
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1 マドゥヤン*方面から、エジプトへと向かう旅行者たちであったという(アル=バガウィー2:481参照)。 2 アーヤ*31の伝承にもある通り、ユースフ*は絶世の美男子だった(アル=クルトゥビー9:153参照)。 3 「商品」とは、奴隷*としての商品のこと。水汲みの者とその仲間たちは自分たちの分け前が減らぬよう、商人である他の旅行者たちに対し、ユースフ*のことは水の所有者から共同で買ったものだ、と主張したのだとされる(アッ=タバリー6:4484参照)。また一説には、ここでの「彼ら」はユースフ*の兄たちのこと。彼らは旅行者たちのもとにユースフ*を見つけ、「これは私たちのもとから逃げた奴隷*である」と主張し、売り払ったのだという(アル=バガウィー2:481参照)。
また、彼ら¹は僅かな値で、つまり数えるほどのディルハム²で、彼を売り払った。彼らは、彼に関して無欲な者たちだったのだ。
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1 この「彼ら」には、水汲みの者とその仲間という説と、ユースフ*の兄たちという説がある(アル=クルトゥビー9:155参照)。アーヤ*19の訳注も参照。 2 「ディルハム」は銀貨のこと。「数えるほどの」という形容には、秤(はかり)を使うまでもない小額の、という意味が含まれている。また「僅かな」という訳をあてた原語「バフス」には、不正な、非合法な、という意味もある(アッ=タバリー6:4485-4490参照)。
(旅行者らはエジプトでユースフ*を売ったが、)彼を買ったエジプト出身の者¹は、自分の妻に言った。「彼の待遇を、よく気遣ってやりなさい。彼は私たちの役に立つかもしれないし、また私たちは彼を子供の代わりにするかもしれないのだから」。そのように、われら*はユースフ*に(エジプトの)その地で、確固たる地位を授けた²。そして(それは、)われら*が彼に、話の解釈³を教えるためであった。アッラー*は、事を決行されるお方⁴であられる。しかし多くの人々は、(それが)分からないのだ。
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1 この「エジプト出身の者」は、エジプトの大臣であった(ムヤッサル237頁参照)。 2 つまり主人のもとで様々な期限を与えられ、エジプトの地で高い地位を得、人々から親しまれた(アル=カースイミー9:3524参照)。 3 「話の解釈」については、アーヤ*6の訳注を参照。 4 ご自身の望まれることを決行されるお方、という意味。あるいはユースフ*の諸事を、特別の配慮(はいりょ)でもって営(いとな)まれるお方、という意味(アル=バガウィー2:483参照)。
彼(ユースフ*)が成熟¹した時、われら*は彼に英知と知識²を授けた。そのようにわれら*は、善を尽くす者³たちに報いるのである。
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1 この「成熟」については、巡礼*章5「成熟」の訳注を参照。 2 一説に、この「英知」は預言者*性で、「知識」は宗教理解(アル=バガウィー2:483参照)。 3 「善を尽くす者」については、蜜蜂章128の訳注も参照。
そして彼が住んでいた家の女性(大臣の妻)が彼を(不倫へと)誘惑し、扉をきっちりと閉めて言った。「さあ、いらっしゃい」。彼は言った。「アッラー*のご加護を(乞います)。本当にあのお方は、私によくしてくださった我がご主人様なのですから。不正*者が成功することは、絶対にありません」。
そして彼女は確かに彼を望み、彼もまた、彼女に対して欲が生じた¹。彼が、その主*の根拠²を目にしなかったなら(、彼もまた彼女を求めたであろう)。そのように(見せたのは)、われら*が彼から悪と醜行³を逸らすためである。本当に彼は、われら*の精選された僕⁴の内の一人なのだから。
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1 大臣の妻は欲望と決意をもって行動に移したが、ユースフ*は単にそのようなことが脳裏(のうり)をよぎっただけであった、とされる(前掲書2:485参照)。預言者*・使徒*の無謬(むびゅう)性については、雌牛章36の訳注を
参照。 2 この「根拠」の解釈には、「ヤァクーブ*の姿」「主人の姿」「啓典のアーヤ*」といった諸説がある。アッ=タバリー*は、いずれにせよ、彼は自分の欲望を制するようなアッラー*の御徴を見たのだ、と結論づけている(6:4511参照)。 3 「醜行」については、蜜蜂章90の訳注も参照。 4 「精選されたアッラー*の僕」とは、アッラー*の崇拝*において誠心を尽くす一方で、アッラー*によって純粋にされ、選ばれ、特別な存在とされ、恩恵を注がれると共に、悪を遠ざけられたような存在のこと(アッ=サアディー396頁参照)。
そして二人は扉へと我先に急ぎ¹、彼女は彼の上着を後ろから(引っぱって)破いてしまった。そして二人は、扉のところに彼女の主人を見出した。彼女は言った。「あなたの家人に悪さをしようとした者の応報は、牢獄に入れられるか、あるいは痛ましい懲罰の外にはありません」。
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1 ユースフ*は逃げるため、大臣の妻はそれを追うためにそうした(ムヤッサル238頁参照)。
彼(ユースフ*)は言った。「彼女が私を(不倫へと)誘惑したのです」。そして彼女の家族の内の裁決者が、(こう)裁決した¹。「もし彼の上着が前方から破れていたら、彼女は本当のことを言ったのであり、彼が嘘つきの類いということになります。
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1 「裁決者」の解釈には、「揺りかごの中の赤ん坊」「上着そのもの(話したわけではないが、その状態が全てを物語っていた)」「大臣の相談役の男」などの諸説がある(アル=クルトゥビー9:172-173参照)。
そして、もし彼の上着が後方から破れていたら、彼女は嘘をついたのであり、彼が正直者の類いということになります」。
それで彼(大臣)は、彼の上着が後方から破れているのを見ると、(こう)言った。「実に、これはあなたたち(女性)の作策略の一つである。本当にあなた方の策略は、途方もないものなのだから。
ユースフ*よ、これ(を他言すること)から身を慎むのだ。そして(妻よ、)自分の罪の赦しを乞え。本当にあなたは、過ちを犯した者の類いなのだから」。
町の婦人たち¹は、(噂を聞いて)言った。「(大臣)閣下の奥様が、(彼女の召使いの)若者を誘惑するんですって。(彼は)彼女のことを、恋心で夢中にさせたんですよ。本当に彼女は、紛れもない迷いの中にありますわね」。
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1 「町の婦人たち」とは、町の有力者の妻たちである、と言われる(イブン・カスィール4:384参照)。
それで彼女(大臣の妻)は彼女たちの策謀¹を聞くと、彼女たちに(使いを)送っ(て、邸宅の招待し)た。そして彼女たちに肘掛けを用意²し、彼女たち一人一人に(食事用の)ナイフを渡し、(こう)言った。「(ユースフ*よ、)彼女たちのところに、お出でなさい」。それで彼女たちは彼を目にした時、彼に賛嘆し、(余りの美しさに驚き、ナイフで)自分たちの手を切ってしまった。そして彼女たちは、(こう)言った。「アッラー*にご加護を(乞います)。これは人間じゃないわ!これは、高貴な天使*様以外の何ものでもないわよ!」³
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1 「この策謀」とは、婦人たちの彼女に対する陰口と、彼女をけなすことにおける「策謀」のこと(ムヤッサル239頁参照)。 2 「肘掛けを用意」することとは、食事の場を提供することの意(アル=バガウィー2:489参照)。 3 預言者*ムハンマド*はユースフ*の美貌について、こう仰った。「彼は美の半分を授けられた」(ムスリム「信仰の書」259参照)。
彼女(大臣の妻)は(彼女たちに)、言った。「その人が、あなた方が彼(への恋心)ゆえに私を咎めた者です。私は確かに彼を誘惑し、彼は自らを守りました。もしも(今後、)私が彼に命じることをしなければ、彼は必ずや牢獄に入れられ、惨めな者の類いとなるでしょう」。
彼(ユースフ*)は言った。「我が主*よ、私には、彼女たちが私を招いていること(醜行)よりも、牢獄の方がましです。そして、もしあなたが私から彼女たちの策略を遠ざけて下さらなければ、私(の欲)は彼女らへと揺れ動き、私は(罪を犯す)愚か者の類いとなってしまいます」。
そして彼の主*は彼(の祈り)をお聞き届けになり、彼女たちの策略を彼から遠ざけて下さった。本当に彼こそは、よくお聴きになるお方、全知者であられる。
それから(ユースフ*が無実である)証拠¹を目にした後、彼を暫く牢獄に入れておくことにしよう、と(いう意見が、)彼ら²に持ち上がった。³
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1 この「証拠」とは、上着の件、裁決者の裁決の件、婦人たちがナイフで手を傷つけた件、彼女らが彼を賛嘆した件、といったこととされる(アル=クルトゥビー9:186参照)。 2 「彼ら」とは、大臣とその取り巻きの者たちのこと(ムヤッサル239頁参照)。 3 一説によると、不詳(ふしょう)事の噂(うわさ)が広がらないようにするため、ほとぼりが収まるまで、ユースフ*のことを拘束しておこうとしたのだという(イブン・カスィール4:387参照)。
こうして彼と一緒に、二人の若者¹が牢獄に入った。その片方が、(こう)言った。「本当に私は(夢で)、自分が酒*(を造るために葡萄)を搾っているのを見ました」。また、もう一方は言った。「本当に私は(夢で)、自分の頭の上にパンを運ぶのを見ました。そこから、鳥が啄んでいました」。 (二人は言った。)「(ユースフ*よ、)この解釈について、私たちにお告げ下さい。本当に私たちは、あなたが善を尽くす者²たちの類いであるとお見受けしますから」。
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1 「二人の若者」はエジプトの王の家来で、何らかの原因で王の怒りを招き、投獄されたのだという(アッ=タバリー6:4538-4539参照)。 2 ユースフ*は牢獄の中でも、病人を見舞ったり、悲しむ者を慰(なぐさ)めたり、何か必要がある者にはそのために努力したりしていたとされる(アッ=タバリー6:4540-4541参照)。蜜蜂章128「善を尽くす者」の訳注も参照。
彼(ユースフ*)は、言った。「あなた方が貰うことになっている食事は、あなた方にやって来ることはありませんよ。それがあなた方にやって来る前に、私がその解釈について、あなた方に告げるまでは¹。それ(解釈)は、我が主*が私に教えて下さったものの一部。本当に私は、アッラー*を信じず、来世に対してもまさしく不信仰者*である民の宗教を、捨て去りました。
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1 つまり、牢獄で配給される食事がやって来る前に、彼らに食事の内容が何か、告げることが出来るということ。この言葉は、彼の知識の高さと、夢に対する彼の解釈力の確かさを示すと共に、正しい信仰への呼びかけへとつながる前置き的な役割を果たしている。尚、ここでの「解釈」は「内容」という意味だが、夢の解釈についての文脈上、同語が用いられている(アッ=シャウカーニ3:36-37参照)。
そして私は、我がご先祖様たち、イブラーヒーム*とイスハーク*とヤァクーブ*の宗教に従ったのです。私たちはアッラー*(の崇拝*)に、いかなるものも並べるべきではないのですから¹。それ(タウヒード*)は私たちと人々への、アッラー*のご恩寵からのものです。しかし人々の大半は、(その恩寵の主に)感謝しません。
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1 頻出名・用語解説のシルク*の項を参照。
牢獄の仲間たちよ、異なる複数の主¹(の崇拝*)がより善いのでしょうか?それとも唯一で*、全てに君臨し給う*お方、アッラー*(の崇拝*がより善いの)でしょうか?
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1 この「複数の主」とは、木、石、天使、死人など、シルク*の徒が崇拝*の対象としていた、何の力もない存在のこと(アッ=サァディー398頁参照)。
あなた方はかれ(アッラー*)を差しおいて、自分たちと自分たちの先祖が名付けた名前¹を崇めているに過ぎません。アッラー*はそれら(の崇拝*)に、いかなる(正当な)根拠も下されてはいないのです。ご裁決はアッラー*にのみ属し、かれはあなた方が、かれ以外は崇拝*しないように命じられたのですから。それが正しい宗教。しかし人々の大半は(、そのことを)知りません。
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1 この「名前」については、高壁章71の訳注を参照。
牢獄の仲間たちよ、あなた方の一人はといえば(牢獄から出ることになり)、そのご主人(エジプト王)に酒*を注ぐでしょう。そしてもう一人はといえば、磔のされ(て殺され)、鳥がその頭を啄むことになるでしょう。あなた方二人が教示を請うたことは、決定されました¹」。
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1 一説に、ユースフ*は啓示を受けてこのように断言した。また一説には、「あなた方の質問に対する答えは終わった」という意味(イブン・アル=ジャウズィー3:226-227参照)。
彼(ユースフ*)は、二人の内、(牢獄から)助かる者であることを知った者に、言った。「あなたのご主人様(王)のもとで、私(が無実の罪で投獄されていること)について、話して下さい」。そして(彼は牢獄から出たが、)シャイターン*が彼に、その主人に話すことを忘れさせた¹。それで彼(ユースフ*)は数年間、牢獄で過ごすことになった。
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1 一説に、この「彼」はユースフ*、「話すこと」は「思い起こすこと」の意。ユースフ*が牢獄から出る者に伝言を頼んだ時、アッラー*にこそ嘆願し援助を求めるのを忘れ、人間に頼ってしまったことを指す。この解釈の場合、牢獄に数年とどまることになったのは、そのことに対する罰であった(アル=クルトゥビー9:195参照)。預言者*・使徒*の無謬(むびゅう)性については、雌牛章36の訳注を参照。
王は言った。「本当に私は(夢で)、痩せた七頭の雌牛に食べられてしまう太った七頭の雌牛と、七本の緑の穂と、別の(七本の)枯れた穂を見た。名士たちよ、我が夢について教示してくれ。もし、あなた方が夢を解釈するのならば」。
彼ら(名士たち)は言った。「(それは、)夢まぼろしがごちゃ混ぜになった(無意味な)ものです。そして私たちは、夢の解釈など知る者ではありません」。
そして(牢獄の仲間だった)二人の内の助かった者が、(ユースフ*のことを)長い時間の(経過した)後に思い出して、言った。「私めがその解釈を、あなた方に申し上げましょう。ですから、私を(ユースフ*のもとに)お遣わし下さい」。
(彼はユースフ*の所に着くと、言った。)「ユースフ*よ、大そうな正直者¹よ、(王様がご覧になった、)痩せた七頭の雌牛に食べられてしまう太った七頭の雌牛と、七本の緑の穂と、別の(七本の)枯れた穂(の夢)について、私たちにご教示下さい。私は人々のもとへと、(それを伝えるべく)変えるでしょう。(それは、)彼らが知るため²なのです」。
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1 「大そうな正直者」については、婦人章69の訳注を参照。 2 夢の解釈と、ユースフ*の地位と穂を「知るため」ということ(ムヤッサル241頁参照)。
彼(ユースフ*)は、言った。「七年間、ずっと懸命に耕し、あなた方が収穫したものは、それを穂につけたまま置きなさい。但し、あなた方が食べる少量のものは別ですが。
そしてその(豊作の七年の)後、あなた方がそのために予め蓄えていたものを、あなた方が貯蔵する僅かなものを除いて食べ尽くしてしまう、(凶作の)過酷な七年が到来します。
そしてその(豊作の七年の)後、(雨によって)人々が救済され、(果実を)搾る年がやって来ます」。
(夢の解釈を聞いた後、)王は言った。「彼(ユースフ*)を(牢獄から出し)、私のもとに連れて来なさい」。そして彼のもとに使いが来ると、彼は言った。「あなたのご主人様のもとに戻り、(私の無実から明らかになるよう、)自分たちの手を切ったご婦人方¹の件(の真実)について、彼に尋ねて下さい。本当に我が主*は、彼女らの策略についてご存知のお方です」。
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1 ユースフ*は礼儀と敬意の念から、大臣の妻を名指しにはしなかった(アル=バガウィー2:495参照)。
彼(王)は(それを聞くと、婦人たちと大臣の妻を呼んで、)言った。「(その日、)ユースフ*を誘惑した時の、あなた方の件は何だったのか?」彼女らは言った。「アッラー*にご加護を(乞います)。私たちは彼に、何の落ち度も認めませんでした」。(大臣)閣下の妻は、言った。「今、真実が明るみに出ました。私が彼を誘惑したのであり、本当に彼は正直者です。
それ¹は彼(大臣)が、私が彼を陰で騙してはおらず²、また、アッラー*が欺く者たちの策略をお導きにはならないというこよを、知るためなのです。
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1 「それ」とは、彼女がユースフ*の無実を告白したこと(ムヤッサル241頁参照)。 2 つまり、ユースフ*のことを誘惑したものの、彼は、それを拒(こば)んだので、最悪の罪にまでは至らなかった、ということ(イブン・カスィール4:394参照)。尚、アッ=シャウカーニー*によれば、大半の解釈学者は、このアーヤ*と後続のアーヤ*の言葉はユースフ*のものである、としている。その場合、ユースフ*がこの言葉を語ったのは、「牢獄の中で、王と婦人たちの間で交わされた一部始終を、王の使いから聞いた時」あるいは「王のもとで」という説がある(3:47-48参照)。
そして私は、自分自身が潔白だとは言いません。本当に人の自我というものは、我が主がご慈悲をかけて下さった者を除いては、悪をよく指図するもの¹ですから。本当に我が主*は赦し深いお方、慈愛深い*お方です」。
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1 これがユースフ*の言葉であるとするとする場合、雌牛章36の預言者*・使徒*の無謬(むびゅう)性についての訳注も参照。
(ユースフ*の無実を知ると、)王は言った。「彼(ユースフ*)を連れて来るのだ。そうすれば彼を、私にとっての特別な側近としよう」。それで(ユースフ*がやって来て)話した時、彼(王)は(ユースフ*の無実と徳の高さを知って、)言った。「本当にあなたはこの日、私たちのもとで地位高き者、(全権を委ねられた)信頼篤き者である」。
彼(ユースフ*)は、言った。「私を、(エジプトの)地の蔵相として下さい。本当に私は管理に長じた者、知者ですから」。
そのように、われら*は(エジプトの)地において、ユースフ*に確固たる地位を授けた。彼は自分が望む場所どこにでも、滞在することが出来る。われら*は、誰でもわれら*が望む者に、われら*の慈悲を授け、善を尽くす者¹たちの報いを反故にはしないのだ。
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1 「善を尽くす者」については、蜜蜂章128の訳注を参照。
来世の報いこそは、信仰し、(アッラー*を)畏れ*ていた者たちにとって、(現世の報い)より善いのである。
(そして不作に見舞われたため、食料を得ようと、)ユースフ*の兄たちが、(エジプトに)やって来た¹。彼らが彼(ユースフ*)のところに入った時、彼は彼らのことが分かった。彼らは(長い時間の経過とユースフ*の変わりっぷりゆえ)、彼に気付かずにいたが。
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1 王の夢に対するユースフ*の解釈通り、エジプトの地を七年の豊作が訪れた。それで彼はそれを保存しておいたが、その後に凶作の年が訪れる。それは他の諸国にまで及び、人々は食料を得るために挙(こぞ)ってエジプトへと向かった。パレスチナに住んでいたヤァクーブ*らも同様で、ユースフ*に次いでお気に入りだったビンヤーミーン(アーヤ*8「弟」の訳注を参照)を除く。十人の息子らをエジプトへと遣わした(アル=カースイミー9:3561参照)。
そして彼(ユースフ*)は(彼らを気前よく歓待した後)、彼ら(のラクダ)にその荷物¹を用意した時、言った。「あなた方の父方の弟(ビンヤーミーン)を、私の所に連れて来なさい²。あなた方は、私が升³(による計量)を全うするとは、そして私が最良の歓待者だとは、思わないのですか?
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1 つまり、彼らが求めていた食料のこと(ムヤッサル242頁参照)。 2 この「弟」については、アーヤ*8の訳注を参照。食料を買うためにエジプトにやって来た者には、一人につきラクダ一頭分の荷物しか詰めないように決められていた。それで彼らには故郷に弟が一人いるという話題になった時、もう一頭分の食料が詰めるようにと、このように言ったのだという(アッ=タバリー6:4573参照)。あるいはユースフ*は故意に、彼らにスパイの嫌疑(けんぎ)をかけ、彼らの素性を詳しく尋ね出した。そして彼らに、国に残してきた弟がいることを聞き出すと、彼らの言うことが正しいかどうか試すためという名目で、彼を連れて来るように命じ、そうするまで兄たちの一人を拘束することにした(アル=カースイミー9:3562参照)。 3 「升」については、家畜章152の訳注を参照。
そして(次回)、もしあなた方が私のところに彼を連れて来なかったら、私のもとにあなた方の(食料を量るための)升はありません。また、私のもとにも近付かないで下さい」。
彼らは言った。「私たちは彼(を一緒に連れて来ること)に関し、彼の父親を口説いてみましょう。本当に私たちは、必ずやります」。
彼(ユースフ*)は、自分の小間使いたちに言った。「彼らの物品¹を(気付かれないように)、彼らの荷物の中に入れておきなさい。彼らが家人のもとに帰った時、彼らがそれに気付くように。彼らは恐らく、戻って来るでしょう」。²
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1 「物品」とは、彼らが食料と交換するために持って来た品のこと(アッ=タバリー6:4574参照)。貨幣(かへい)であったとも言われる(アル=バガウィー2:501参照)。 2 この行為の理由については、「その物品で食料を得るべく、彼らがまた戻って来るようにするため」「家族から食料の代価を取ることを、恥じたため」「彼の徳を知らしめ、また戻って来るように差し向けるため」などの諸説がある(アル=クルトゥビー9:223参照)。
そして彼ら(ユースフ*の兄たち)は、自分たちの父親のところに戻ると、言った。「お父さん、私たちに(食料を量るための)升¹が禁じられてしまいました²。ですので私たちと共に、私たちの弟(ビンヤーミーン)を遣わして下さい。(そうすれば、)本当に私たちは彼への保護者でありつつ、(食料を)量(って持って来)れることになります」。
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1 「升」については、家畜章152の訳注を参照。 2 その理由については、アーヤ*59-60を参照。
彼(ヤァクーブ*)は言った。「どうして私が、お前たちに彼(ビンヤーミーン)を任せようか?以前、私がお前たちに彼の兄を任せ(て、裏切られ)たように?(私はお前たちの保護は信用しないが、アッラー*の保護を信頼する。)アッラー*は保護者の内でも最善のお方であられ、かれは慈悲深い者たちの中でも最も慈悲深いお方」。
そして彼らが自分たちの荷物を開けた時、彼らは、自分たちの物品¹が彼らに返されているのを見出した。彼らは言った。「お父さん、(これ以上)何を求めましょうか?これは私たちに返された、私たちの物品です。(だから安心して、ビンヤーミーンを行かせて下さい、)私たちは私たちの家族に食料を調達し、私たちの弟を保護し、(彼の分として)ラクダ一頭分の升(で量った食料)を付け加えましょう。それは(エジプトの蔵相にとって)、取るに足らない升(の量)です」。
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1 「物品」については、アーヤ*62の訳注を参照。
彼(ヤァクーブ*)は言った。「私は彼(ビンヤーミーン)を、お前たちと一緒に行かせたりするまい。お前たちが八方ふさがりとならない限り、必ずや彼を連れて(戻って)来る、というアッラー*を証人とした誓約を私にするまでは」。そして彼らが、彼に対してその誓約をすると、彼は言った。「アッラー*が私たちの言うことに対し(ての証人であり)、請け負われる*お方であられる」。
また、彼(ヤァクーブ*)は言った。「我が息子たちよ、(エジプトに入る時は)一つの門から入るのではなく、別々の門から入るのだ¹。そして私は、アッラー*(の定め)をよそに、あなた方を益することなど、少しも出来やしない。裁決はアッラー*にのみ属するのだから。私は、かれにこそ全てを委ねた*。そして(何かを誰かに)委ねる者たちには、かれにこそ全てを委ねさせるのだ」。
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1 彼ら息子たちは父親を同じくする、美貌(びぼう)と見事さと力強さを兼ね備えた十一人だった。それでヤァクーブ*は、彼らが人々から「アイン(筆章51の訳注を参照)」に遭(あ)うことを恐れたのだという(アル=クルトゥビー9:226参照)。
そして彼らが、父親の命じた所から(エジプトに)入った時、(そのことが)アッラー*(の定め)をよそに、彼らのことを益することなどは少しもなかった。ただ、(それは)ヤァクーブ*の気がかりだったのであり、彼はそれを晴らしただけなのである¹。本当に彼はまさしく、われら*が(啓示によって)彼に教えたものによる、知識の持ち主であった。しかし人々の大半は知らないのだ。
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1 アーヤ*67の「別々の門から入るのだ」の訳注を参照。
そして彼らがユースフ*のもとに入った時、彼(ユースフ*)はその弟(ビンヤーミーンと二人きりになり、彼)を自分の方へ抱き寄せた。彼は(ビンヤーミーンに)言った。「実に私こそは、お前の兄なのだ。ならば彼らが(昔、私に対して)行っていたことゆえに、悲嘆に暮れるのではない」。
そして彼ら(のラクダ)にその荷物を用意した時、彼(ユースフ*)は自分の弟の荷物に(、こっそりと)器を入れ(させ)た¹。それから(彼らが出発しようとした時、)呼びかける者が(こう)呼びかけた。「隊商(の人々)よ、実にあなた方はまさしく盗人だ!」
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1 この「器」とは、王が飲食用に用いる器。一説には金製、あるいは銀製だった。ユースフ*がこれをビンヤーミーンの荷物の中に忍ばせたのは、彼に盗みの嫌疑(けんぎ)をかけ、拘束して自分のところに留めるためだった。というのもヤァクーブ*の法では、盗人の罰は、被害者の奴隷*となることとして定められていたからである(イブン・ジュザイ1:421-422参照)。アーヤ*75とその訳注も参照。
彼ら(ユースフ*の兄弟ら)はその(呼ぶ)者たちの方に向かい、言った。「何が無いのですか?」
彼ら(呼ぶ者と、その取り巻き)は言った。「王の器が無いのだ。そしてそれを持って来た者には(褒美として)、ラクダ一頭分の(食料が入った)荷をやろう」。(呼ぶ者は、言った。)「私がその保証人だ」。
彼ら(ユースフ*の兄弟ら)は言った。「アッラー*に誓って、あなた方は確かにご存知になったでしょう。私たちが(エジプトの)地を腐敗*させるために来たのではなく、私たちが盗人でもなかったということを」。
彼らは言った。「では(あなた方のもとでの)、その者(盗人)の報いは何か?もし、あなた方が嘘つきだったとしたら(、だが)」。
彼ら(ユースフ*の兄弟ら)は言った。「その者(盗人)の報いは、荷物の中にそれ(器)が見つかった者、彼自身がその報いとなる¹ことです。このように私たちは、(私たちの法において、盗みを犯した)不正*者たちに報いるのです」。
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1 つまり、窃盗の被害者に自分自身を奴隷*として与えることで、報いること(ムヤッサル244頁参照)。
(ユースフ*の兄弟らはユースフ*のもとに戻され、)彼(ユースフ*)は、彼の弟の荷物入れの前に、彼らの荷物入れ(の検査)から始めた。それから、彼の弟の荷物入れから、それ(器)を取り出した。このように、われら*はユースフ*に対して(、ビンヤーミーンを手許に留めておけるよう、)取り計らった。彼はアッラー*がお望みにならない限り、(エジプト)王の決まりにおいて、彼の弟を引き取ることが叶わなかった¹のだから。われら*は、われら*が望む者の位を上げる。そしてあらゆる知者の上には、(更なる)知者がいる²のだ。
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1 ユースフ*は彼の弟を兄たちから引き取りたかったが、当時のエジプトの法では、盗みの罰は鞭打ちと罰金刑のみであったとされる。それでユースフ*はアッラー*のお示しにより、彼らの裁決を彼ら自身の法に任せ、その目的を上手く果たしたのであった(アル=バガウィー2:505参照)。 2 そして知の頂点には、アッラー*がおられる(ムヤッサル244頁参照)。
彼ら(ユースフ*の兄ら)は言った。「もし彼(ビンヤーミーン)が盗みを犯したのなら、以前、彼の兄(ユースフ*)も確かに、盗みを犯した¹のです」。そしてユースフ*はそれ(彼らの嘘)を心の内に隠し、彼らに対してそれを露わにはしなかった。彼は(心の中で)言った。「あなた方は(あなた方が貶している者)よりも、悪い地位にあるのだ。そしてアッラー*はあなた方の言うことを、最もよくご存知であられる」。
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1 この「盗み」については、「母方の祖父が崇めていた偶像を取って壊したこと」「食卓の食べ物を隠し取っては、貧者*に与えていたこと」など諸説あるが、いずれもユースフ*とビンヤーミーンとは母を異にする兄たちの、自らの体面を気にした言い逃れである(アル=バガウィー2:506、アッ=サアディー402頁参照)。
彼ら(ユースフ*の兄ら)は言った。「閣下、実に彼には、老いた年配の父親がいるのです。ですから彼の代わりに、私たちの誰か一人をお取り下さい。本当に私たちは、あなた様を善人とお見受けしますから」。
彼(ユースフ*)は言った。「私たちが、私たちの(盗難)品をその手許に見出した者以外を捕まえるなどということから、アッラー*のご加護を(乞う)。そうしたら、本当に私たちはまさしく不正*者です」。
そして彼(の返事)に絶望すると、彼らは自分たちだけになって密談した。彼らの最年長者は言った。「一体あなた方は、お父さんが確かに、アッラー*を証人とする誓約¹をあなた方にさせたのを、知らないのか?(これ)以前にも、あなた方はユースフ*のことで不手際を犯したのだ。そして私は、お父さんが私(のエジプト出発)をお許しになるか、あるいはアッラー*が私にご裁決¹を下されるまで、この(エジプトの)地を離れまい。かれは裁決者の内でも最善のお方なのだ。
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1 この「誓約」については、アーヤ*66を参照。 2 「ご裁決」とは、死、あるいは、弟を取り返すこと(イブン・カスィール4:404参照)。
お父さんのもとに戻り、(こう)言うのだ。『お父さん、本当にあなたの息子(ビンヤーミーン)は盗みを働きました。そして私たちは、自分たちが知ったこと以外は証言していない¹のであり、知り得ないことにおいてまで保護する者ではなかったのです²。
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1 この「証言」とは、王の杯がビンヤーミーンの荷物入れから出てきたために、彼がそれを盗んだのを認めたこととされる(アッ=タバリー6:4606参照)。 2 この「知り得ないこと」の解釈については、「ビンヤーミーンが盗みをすること」「夜、彼らが眠っている間のこと」「昼夜におけるビンヤーミーンの一挙一動」といった諸説がある(アル=クルトゥビー9:244-245参照)。
また、私たちがいた町(エジプトの人々)と私たちが共に旅した隊商(の同行者ら)に、(事の真相を)お尋ねください。本当に私たちは、まさしく正直者なのです』」。
(彼らは父親のもとに帰ると、事の一部始終を話した。)彼(ヤァクーブ*)は言った。「いや、お前たちの(悪に傾きやすい)自我が(その)事を、お前たちに惑わせて促したのである。(我が忍耐*は、)よき忍耐*¹だ。アッラー*は彼らを全員²、私へと連れ戻して下さるかもしれない。本当に彼は全知者、英知あふれる*お方なのだから」。
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1 「よき忍耐*」については、アーヤ*18の訳注を参照。 2 ユースフ*、ビンヤーミーン、そして自らエジプトに残った長兄の三人のこと(ムヤッサル245頁参照)。
そして彼らから背を向け、言った。「ユースフ*への我が悲哀よ!」彼の両目は悲しみゆえに白く濁り¹、彼は(募る悲しみを)押し殺した。
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1 泣き過ぎて盲目になった、または視力が非常に弱くなった(アル=クルトゥビー9:248参照)。
彼ら(息子たち)は言った。「アッラー*に誓って、あなたは身を滅ぼしそうになるまで、あるいは(実際に)破滅する者の類いとなるまで、ユースフ*のことを思い続けます(か)!」
彼(ヤァクーブ*)は言った。「私は自分の苦悩と悲しみを、アッラー*のみに訴えるのだ。そして私はアッラー*によって、お前たちの知らないこと¹を知っている。
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1 これが何かに関しては、「ユースフ*が、まだ生きていること」「ユースフ*の正夢の実現」(アル=バガウィー2:510参照)といった解釈がある。
息子たちよ、(再びエジプトへ)赴き、ユースフ*とその弟を探索せよ。そしてアッラー*のご慈悲に、失意してはならない。本当にアッラー*のご慈悲に失意するのは、不信仰の民*だけなのだから」。
彼らは(エジプトへと向かい、)彼(ユースフ*)のもとに(参じて)入ると、言った。「閣下、私たちと私たちの家族を(旱魃と飢饉の)災害が襲い、私たちは僅か(で粗悪)な物品を携えて来ました。ですから、私たちのために升¹を満たし、私たちに施して下さい。本当にアッラー*は、施す人々にお報いになりますから」。
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1 「升」については、家畜章152の訳注を参照。
彼(ユースフ*)は言った。「一体あなた方は、あなた方が無知な者たちであった時¹に、ユースフ*とその弟に対して自分たちがしたことを知っているのですか?」
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1 彼らはユースフ*に対しての仕打ちが、このような結果になるとは思ってもいなかった(アッ=タバリー6:4627参照)。
彼らは言った。「本当に、あなたは本当に、ユースフ*なのですか?」彼は言った。「私はユースフ*で、これが我が弟です。アッラー*は私たちに、確かに(別離の後の再会という)お恵みを授けて下さいました。本当に誰であとろうと、(アッラー*を)畏れ*、忍耐*する者、実にアッラー*は(そのように)善を尽くす者¹たちの褒美を無駄にされることがないのです」。
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1 「善を尽くす者」については、蜜蜂章128の訳注も参照。
彼らは言った。「アッラー*に誓って、アッラー*は確かにあなたを、私たちよりもお引き立て下さいました。そして本当に私たちはまさしく、過った者たちだったのです」。
彼は言った。「この日、あなた方に咎めはありません。アッラー*があなた方を、お赦し下さいますよう。そして、かれは慈悲深い者の内でも、最も慈悲深いお方です」。
(それから父ヤァクーブ*の話を聞くと、ユースフ*は彼らに言った。)「この私の上着を携えて(再びお父さんの所へ)行き、それをお父さんの顔に投げかけなさい。彼は、眼が見えるようになるでしょう。そしてあなた方の家族を皆、私のもとに連れて来るのです」。
隊商が(ユースフ*の上着と共にエジプトを)出発した時、彼らの父(ヤァクーブ*)は(周りに)言った。「本当に私は、まさにユースフ*の匂いを感じる。あなた方が私のことを、愚か者扱いするのでなければ(、私のことを信じたであろうに)」。
彼ら(ヤァクーブ*の周りにいた者たち)は、言った。「アッラー*に誓って、本当にあなたはまさしく、(まだ)昔の迷い¹の中にありますね」。
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1 「昔の迷い」とは、ユースフ*に対する深い愛情と回想のこと(ムヤッサル246頁参照)。
それで(ヤァクーブ*に)吉報を伝える者が到着した時、彼はそれ(ユースフ*の上着)を彼の顔に投げかけ、彼の視力は戻った。彼(ヤァクーブ*)は(、周りの者たちに)言った。「一体、私はお前たちに言わなかったのか?本当に私はアッラー*によって、お前たちの知らないこと¹を知っている、ということを?」
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1 アーヤ*86の、同様のくだりに関する訳注を参照。
彼ら(ユースフ*の兄たち)は、(エジプトからヤァクーブ*のもとに戻って来ると、彼に)言った。「お父さん、私たちのため、私たちの罪の赦しを乞うて下さい。本当に私たちは、過った者たちだったのですから」。
彼は言った。「お前たちのため、そのうち我が主*にお赦しを乞おう¹。本当にかれこそは、赦し深いお方、慈愛深い*お方なのだから」。
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1 アル=バガウィー*によれば、ヤァクーブ*は、祈願が受け入れられやすい明け方まで、その時を遅らせたのだというのが大半の解釈学者の見解。そのほかにも、「ユースフ*の許しを得てから、赦しを乞うつもりだった」というような説もある(2:514参照)。
そして彼ら(全員)が(エジプトの)ユースフ*のもとにやって来た時、彼(ユースフ*)は両親を自分の方へ抱き寄せて、言った。「安全にーーアッラー*がお望みならーー、エジプトにお入り下さい」。¹
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1 一説にユースフ*は、エジプト国境まで彼らを迎え出た(アッ=タバリー6:4641参照)。
そして彼は自分の両親を御座の上に上げ(て自分の傍に座らせ)、彼ら(両親と十一人の兄弟)は、彼に向かってサジダ*¹した。彼は言った。「お父さん、これは我が主*がまさに実現して下さった、以前(小さい頃に)私が見た夢²の解釈です。かれ(我が主*)は私に、本当によくして下さいました。私を牢獄から出して下さり、シャイターン*が私と私の兄たちの間を突い(てこじれさせ)た³後、あなた方を辺境の地から連れて来て下さったのですから。本当に我が主*は、かれがお望みになること(の遂行)に霊妙な*お方であられます。本当にかれは全知者、英知あふれる*お方。
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1 イブン・カスィール*によれば、偉大な者に挨拶する時にサジダ*するのは、彼らの法では合法だった。しかしイスラーム*においては、サジダ*はアッラー*だけへのものとなった(4:412参照)。 2 この夢については、アーヤ*4を参照。 3 シャイターン*から突かれることに関しては、高壁章200の訳注を参照。
我が主*よ、あなたはまさしく私に王権の一部を下さり、私に話の解釈¹を教えて下さいました。諸天と大地の創成者*よ、あなたは現世と来世における、我が庇護者*です。私を服従する者(ムスリム*)としてお召しになり、正しい者*たちの仲間入りをさせて下さい」。
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1 「話の解釈」については、アーヤ*6の訳注を参照。
(使徒*よ、)それ¹は、われら*があなたに啓示する、不可視の世界*に属する消息の一部。そして彼ら(ユースフ*の兄たち)が策謀しつつ、彼らの事²を示し合わせた時、あなたは彼らのもとに(立ち合わせて)はいなかったのである。
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1 この「それ」とは、ここまで述べられたユースフ*の話のこと(ムヤッサル247頁参照)。 2 この「彼らの事」とは、アーヤ*9-10に言及されている策謀のこと(前掲書、同頁参照)。
そして(使徒*よ、)人々の大半は、ーーたとえ、あなたが(彼らを信じさせようとして)躍起になったとしてもーー、信仰者とはならない。
また、あなたはそれ¹ゆえに、彼らにいかなる見返りも求めてはいない。それは全世界に対する教訓に、外ならないのだから。
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1 この「それ」とは、彼らを信仰へと導くこと(ムヤッサル248頁参照)。
諸天と大地における、いかに多くの(アッラーの唯一性*と御力を示す)御徴を、彼らは通り過ぎ(目にし)ていることか?それらに対して背を向けながら?
また彼らの大半は、シルク*の徒であることなくして、アッラー*を信じることがない。¹
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1 つまり、アッラー*が全ての創造主であり、崇拝*に値する唯一の対象であると認めつつも、それと同時に偶像をも崇めているような状態のこと(前掲書、同頁参照)。
一体彼らは、アッラー*の懲罰である、(彼らを)覆い尽くすものが、自分たちに襲いかからないと安心していたのか?あるいは彼らが気付かぬまま、(復活の)時が彼らのもとに突然やって来ることはない、と?
(使徒*よ、)言え。「これは、我が道。私も、私に従った者たちも確証に基づき、アッラー*(のみへの崇拝*)へと招く。アッラー*に称え*あれ、私はシルク*の徒の類いではない」。
そして(使徒*よ)、われら*があなた以前に(使徒*として)遣わしたのは、われら*が啓示を下す、町の住民の男性たち(人間)たち以外の何者でもなかった¹。それで一体彼ら(不信仰者*たち)は、地上を旅し、彼ら以前の(不信仰)者*たちの結末がいかなるものであったかを見なかったのか?来世の住まいこそは、(アッラー*を)畏れる*者たちにとって、(現世など)より善いのである。一体あなた方は、分別しないのか?
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1 アッラー*は使徒*を女性ともせず、(天使*など)人間以外のものともせず、僻地(へきち)出身のものともされなかった(イブン・カスィール4:422-423参照)。同様のアーヤ*として、預言者*たち章7-8、識別章20も参照。
(使徒*よ、過去の使徒*たちも嘘つき呼ばわりされたが、すぐ勝利が訪れたわけではなかった。)やがて使徒*たちが(、自分の民はもはや信じることはないという)大きな失意に陥り、(民が、自分たちは使徒*たちに)確かに嘘をつかれた¹のだと思った時、彼ら(使徒*たち)のもとにわれら*の勝利が到来し、われら*が望む者は救い出されたのだ。かれの猛威(という懲罰)が、罪悪者である民から遮られることはない。
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1 つまり、彼らが招いている教えの内容、あるいは勝利に関して「嘘をつかれた」と思うこと(イブン・ジュザイ1:428参照)。
彼ら(ユースフ*とその兄弟たち)の物語の中には確かに、澄んだ理性の持ち主にとっての教示があった。それ(クルアーン*)は、でっち上げられた作り話などではない。しかし(それは)それ以前の者¹の確証、全ての物事²の解明、導きであり、信仰する民への慈悲なのである。
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1 「それ以前のもの」とは、それ以前に下った啓典のこと(ムヤッサル248頁参照)。 2 この「すべての物事」とは、合法なことや非合法なこと、勧(すす)められることや避けるべきことなど、人間が必要とする全てのこと(前掲書、同頁参照)。