ترجمة سورة الإسراء

الترجمة اليابانية - سعيد ساتو
ترجمة معاني سورة الإسراء باللغة اليابانية من كتاب الترجمة اليابانية - سعيد ساتو .

ハラーム・マスジド*から、われら*がその周りを祝福したアクサー・マスジド¹まで、われら*の(力と唯一性*を示す)御徴の一部をみせるべく、一晩でその僕(ムハンマド*)をお連れになった²お方(アッラー*)³に称え*あれ。本当にかれこそは、よくお聴きになるお方、よくご覧になるお方。
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1 「アクサー」とは、「最も遠い」という意味。その名称の由来は、ハラーム・マスジドから離れており、かつ当時はそれより遠くにマスジド*がなかったため(アッ=シャウカーニー3:286参照)。 2 預言者*ムハンマド*は一晩の内に、ブラークという獣に乗ってマッカ*からエルサレムに到着し、アクサー・マスジドで礼拝した後、ジブリール*に率いられて昇天した。この出来事が全て夢ではなく覚醒(かくせい)した状態で、預言者*が自らの魂と肉体を伴いつつ起こったというのが、大半の解釈学者の説(イブン・カスィール5:5-43参照) 3 「われら」「お方」は、いずれもアッラー*を指す。この修辞法については、食卓章12の訳注も参照。
われら*は(ムハンマド*に夜の旅で栄誉を与えたように、)ムーサー*には啓典(トーラー*)を授け(て栄誉を与え)、それをイスラーイールの子ら*への導きとした。われをよそに、いかなる委任者¹も設けてはならない、と。
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1 「委任者」については、頻出名・用語解説の「全てを請け負われる*お方」の項を参照。
われら*がヌーフ*と共に運んだ者(たち)の子孫¹よ(、彼に倣ってわれら*の恩恵に感謝し、シルク*を犯すのではない)。本当に彼は、感謝深い僕だったのだから。
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1 この「子孫」の解釈には、「全人類」「ムーサー*とその民であるイスラーイールの子ら*」という解釈がある(アル=クルトゥビー10:213参照)。
また、われら*は啓典(トーラー*)の中で、イスラーイールの子ら*に(こう)告げた。「あなた方はきっと、その地(エルサレム)で二度腐敗*を働き、そして必ずやひどく驕り高ぶることになる」。
それで最初の(腐敗*の)約束が訪れた時、われら*はあなた方に、凄まじい武力を備えたわれら*の僕たちを遣わし¹、彼らは家々の間を隈なく徘徊し(て、あなた方を殺害し)た。(それは)実現される約束だったのだ。
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1 アッ=サァディー*によれば、この「(腐敗*の)約束」とは、イスラーイールの子ら*の間に罪が横行し、彼らが法に背き、驕り高ぶった時のこと(447頁参照)。また、この「僕たち」が誰かに関しては諸説あるが、アッ=ラーズィー*(7:300参照)やイブン・カスィール*(5:47参照)は「それらの民の詳細を知ることが、このアーヤ*の本意なのではない」としている。
それから(イスラーイールの子らよ)、われら*は(あなた方の善行と、われら*への服従ゆえに)、あなた方に彼ら(敵)に対する(勝利と国家の)再興を与え、あなた方を財産と子孫で増強した。そしてあなた方を、(敵の数)より多くしたのだ。
もしあなた方が善を尽くしたならば、自分自身に善を尽くしたことになり、悪を行ったならば、(その悪は)自分自身へのものとなる¹。そして、最後の(腐敗*の)約束²が訪れた時(、われら*は再度、あなた方を敵に制圧させた)。(それは)彼らがあなた方の顔を(屈辱で)歪め、また彼ら(敵)が最初にそうしたように、マスジド*(エルサレム)に入城し(て破壊の限りを尽くし)、彼らが(そこで)制圧したものを徹底的に滅ぼしてしまうためであった。
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1 この「(腐敗*の)約束」については、アーヤ*5の訳注を参照。
(イスラーイールの子ら*よ、)あなた方の主*は(、もしあなた方が悔悟して身を正すのであれば)、あなた方にご慈悲をかけて下さるだろう。もし(不正*と腐敗*へと)戻るのであれば、われら*も(あなた方の懲罰へと)戻るのだ。そしてわれら*は地獄を、不信仰者*たちの(永遠の)牢獄としたのである。
本当に、このクルアーン*は最も正しき(道であるイスラーム*)へと導き、正しい行い*を行う信仰者たちには、彼らに大いなる褒美がある、と吉報を告げるのだ。
また、来世を信じない者たち、彼らのためには、われら*が痛ましい懲罰を用意したということを(告げる)。
人間は(時として)、善の祈願のように、悪を祈る¹。本当に人間は元来、せっかちなものだから。
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1 「悪を祈る」の意味に関しては、ユーヌス*章11とその訳注も参照。
われら*は、夜と昼を(、われら*の力と唯一性*を示す)二つの御徴とした。そして夜の御徴を消し、昼の御徴を視界が利くものとした¹。(それは)あなた方が自分たちの主*のご恩寵を求め、年数と計算²を知るようにするため。そして全ての物事を、われらは詳細に説明したのだ。
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1 「夜の御徴」とは闇と月の出現、「昼の御徴」とは光と太陽の出現のこと(イブン・カスィール5:50参照) 2 「計算」については、ユーヌス*章5の訳注を参照。
また、われら*は全ての人間の首に、その取り分を括りつけた¹。そして復活の日*、われらは彼に、彼がそれを開かれた状態で受け取る(ことになる、行いが記された)帳簿を出してやるのだ。²
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1 アッ=シャンキーティー*によれば、「取り分」には大きく分けて、「行い」「幸福か不幸かといった、アッラー*によって既に定められたこと」という二つの解釈があるが、それらは互いに原因と結果という関係にあり、矛盾するわけではない(3:60参照)。尚、「取り分(ターイル)」という語は、語源的には「飛ぶもの、鳥」という意味であり、アラブ人が鳥によって吉兆を占っていたことに由来する(高壁章131の訳注も参照)、とされる、(イブン・ジュザイ1:483参照)。また、「取り分」が「首」に結び付けられているのは、身体の内でもそこが、ネックレスや首枷(かせ)など美醜(びしゅう)を際立たせるもの、常に付いて回るものをつける場所だからである、とされる(アル=バガウィー3:124参照)。 2 復活の日*の帳簿の提示については、高壁章8の訳注も参照。また、この時の様子については、洞窟章49、真実章19-29、割れる章7以降なども参照。
(それから彼に、こう声がかかる。)「自分の帳簿を読め。この日、あなただけで、自分自身(の行いの報い)に対する清算者は十分なのである」。¹
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1 つまり自分で自分の行いを読み、それに対する報いを知ることになる(ムヤッサル283頁参照)。
導かれた者は誰でも、導かれたことで自らを益するだけであり、(虚妄に従って)迷った者は誰でも、迷って自らを害するだけ。また(罪の)重荷を背負う者は、他者(が犯した罪)の重荷まで背負うことはない。そしてわれら*は使徒*を遣わすまで、(いかなる民も)罰することなどないのである¹。
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1 アッラー*は最も公正なお方である。ゆえにその教えが人々に伝達され、それが彼らに対する動かぬ証拠となった後に頑迷(がんめい)に逆らわない限り、決定的な懲罰を下されない(アッ=サァディー455頁参照)。関連するアーヤ*として、婦人章165、家畜章131、155-157、ター・ハー章134、詩人たち章208、創成者*章24も参照。
また、われら*がある町を(その民の不正*ゆえに)滅ぼそうとする時には、(まず)その(町の)贅沢者たちに(民の代表として、われら*への服従と信仰を)命じたものであった。そして彼らがそこで放逸に振る舞う¹と、それ(町)に(懲罰の)御言葉が確定し、われら*はそれを木っ端微塵に滅ぼしたのである。
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1 つまり、アッラー*に反抗し、使徒*を嘘つき呼ばわりすること(ムヤッサル283頁参照)。
一体われらは、ヌーフ*の後にどれだけ多くの(、使徒*を嘘つき呼ばわりした)世代を滅ぼしてきたであろうか。(使徒*よ、)あなたの主*だけで、その僕たちの罪に通暁されるお方、ご覧になるお方は十分なのである。
誰であろうと、手っ取り早いもの(現世)を望む者、われら*は彼にそこでーーわれら*が望む者にわれら*が望む者をーー、手っ取り早く授けよう¹。それからわれら*は彼に、(来世では)地獄を与えるのだ。彼は責められ、(アッラー*のご慈悲から)追いやられつつそこに入り、炙られることになる。
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1 これは、来世のためではなく、現世のためだけに努力する者のこと(前掲書、284頁参照)。フード*章15とその訳注も参照。
そして誰であろうと、信仰者でありつつ、来世(の褒美)を望み、そのためにこそ懸命に努力した者、そのような者たちは、その努力が(アッラー*の御許で)労われる¹ことになる。
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1 頻出名・用語解説「よく労(ねぎら)われる*お方」の項も参照。
いずれ(の者たち)も、これらの者たちにも、またこれらの者たち¹にも、あなたの主*の賜物から、われら*²が増やしてやる。あなたの主*の賜物はもとより、(信仰者にも不信仰者*にも)禁じられていない。
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1 現世のためだけに努力する者たちと、来世ゆえに努力する者たちのこと(ムヤッサル284頁参照)。 2 いずれもアッラー*を指す「あなたの主*」「われら*」という表現の入れ替わりは、「イルティファート(転換)」という修辞法。食卓章12の訳注も参照。
(使徒*よ、)見よ、われら*がいかに彼らのある者を別の者より引き立てたか?¹来世こそは(信仰者にとって)より位が高く、より優れたものなのだが。
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1 現世での糧(かて)、行いにおいて「引き立てた」(ムヤッサル284頁参照)。 家畜章165「・・・高く位置づけられたお方」の訳注も参照。
(人間よ、)あなたはアッラー*と共に、外のいかなる神¹も設けて(崇めて)はならない。そうすればあなたは責められ、見捨てられたままになるだろう。
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1 「神」については、雌牛章133の訳注を参照。
(人間よ、)あなたの主*は、あなた方がかれ(アッラー*)以外には何も崇拝*することなく、両親には孝行を(せよ)、と命じられた。もし彼らの内の片方、あるいは二人とも、あなたの許で高齢に達したなら、彼らに対して「ちぇっ」¹と言ったり、彼らに居丈高になったりしてはならない。そして彼らには(いつも)、温かい言葉をかけてやるのだ。
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1 原語では「ウッフ」。語源には諸説あるが、嫌気を示す語として通用している(アル=バガウィー3:127参照)。これは両親に対して、僅かでも嫌な思いをさせることが禁じられているということであり、それ以上の心理的・身体的危害であれば、尚更である(アル=バイダーウィー3:439参照)。
また彼らに、慈悲の念による謙虚さの翼を下ろし¹、(こう)言うのだ。「我が主*よ、彼らにご慈悲をおかけ下さい。彼らが幼かった私を(優しくいたわって)そだててくれたように」。
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1 「翼を下ろす」という表現については、アル=ヒジュル章88の訳注を参照。
(人々よ、)あなた方の主*は、あなた方の心の内にあるものを最もよくご存知であられる。もしあなた方が正しい者*ならば¹、(かれはあなた方をお赦しになろう、)本当にかれは常に回帰する者²たちに対し、もとより赦し深いお方なのだから。
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1 親孝行をするという意図において正直であれば、という意味であるとされる(アル=クルトゥビー10:246参照)。 2 「常に回帰する者(アウワーブ)」とは、あらゆる状況において、悔悟、愛慕、崇拝*、怖れ、希望、畏怖の念、祈りなどと共に、アッラー*によく回帰する者のこと(アッ=サァディー711頁参照)。
(人間よ、)近親の者にその権利を与えよ。また、貧者*と旅路(で苦境)にある者にも(与えるのだ)¹。そして、ひどい浪費をするのではない。
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1 「近親の者」の権利とは、義務、あるいは推奨(すいしょう)された善行や施しを、その状況や必要に応じて与えること。また「貧者」と「旅路(で苦境)にある者」に対しては、その必要を満たすだけの施しを、浄財*や任意の施しから与えること(前掲書、456頁参照)。
本当に浪費する者たちはシャイターン*の同胞であり、シャイターン*はもとより、その主*に対してこの上ない不信仰者なのだから。
もしあなたが、あなたが望む、あなたの主*からのご慈悲の不在ゆえ、彼らから背を向けるというのであれば、彼らには優しい物言いをせよ。¹
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1 ここでの「ご慈悲」は、糧のこととされる。つまり施しを求められても物質的な余裕がないため、断らなければならない時には、彼らに(余裕が出来たら施すという)よい約束をしなさい、ということ(アッ=タバリー6:5158参照)。
また、(善いことに費やす)あなたの手を自分の首に縛りつけたままにしたり、それ(手)を完全に解き放ったりしてはならない。そうすればあなたは咎められ、悲しみ続けることになろうから。¹
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1 「手を自分の首に縛りつける」とは、自分自身と自分の家族、困っている者たちに対して十分に費やさないこと。「完全に解き放つ」とは、出費において浪費し、自分の能力以上のものを与えること。前者は他人から咎められ、後者は後悔することになる(ムヤッサル285頁参照)。
本当にあなたの主*は、かれがお望みの者に糧を豊富に与えられ、また控えられる¹。本当にかれはもとより、その僕たちにご通暁されており、(その全てを)よくご覧になるお方なのだから。
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1 物語章82、サバア章36、暁章15-16と、それらの訳注も参照。
また(人々よ)、貧困を恐れてあなた方の子供を殺してはならない。われら*が彼らと、あなた方を養うのだから。本当に彼らの殺害は元来大きな罪である。¹
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1 「子供を殺すこと」については、家畜章137とその訳注も参照。
また、姦淫には近づくな¹。実に、それは醜行²であり、悪い道なのだから。
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1 姦淫に「近づくこと」の禁止は、姦淫そのものの禁止よりも意味が強い。それは、姦淫を招くようなあらゆる事柄を禁じているからである(アッ=サァディー457頁参照)。 2 「醜行」については、蜜蜂章90の訳注を参照。
また、権利¹がない限り、アッラー*が(その殺害を)禁じられた者を殺してはならない。不正*に殺された者は、われら*が確かに彼の後見人²に、根拠³を与えたのだ。ならば、無駄に命を奪ってはならない⁴。本当に彼(後見人)は、(その権利を満たすことにおいて)援助される者なのだから。
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1 この「権利」については、家畜章151の訳注を参照。 2 あるいは、イスラーム*法による統治者(ムヤッサル285頁参照)。 3 この「根拠」とは、キサース刑(雌牛章178とその訳注を参照)、または刑の代わりに代償金を請求すること、あるいはいかなる代償もなしに赦免(しゃめん)すること(アッ=タバリー6:5165参照)。 4 殺された者の後継人が、キサース刑で処刑した者の遺体を傷つけたり、加害者以外の者を殺したりすること。あるいは、一般的に、正当な権利もなく人の命を奪うこと(アッ=タバリー6:5165)。
また、孤児の財産には、それが最善の形¹でない限り、彼が成熟²するまで近づいてはならない。そして契約を全うするのだ³。実に契約は(復活の日*)、問われることになるのだから。
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1 この「最善の形」については、家畜章152を参照。 2 この「成熟」については、家畜章152の訳注を参照。 3 食卓章1「契約を果たす」の訳注も参照。
また(他人のために)量る時には升を全うし、正しい秤でもって量るのだ¹。それが(現世で)より善いことなのであり、(来世で)より善い結果となるのだから。
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1 「升」と「秤」については、家畜章152の訳注を参照。
また(人間よ)、あなたの知識のないものに従ってはならない。実に聴覚も視覚も心も、それら全ては、それ¹について問われることになるのだから。
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1 「それ」とは、悪に用いれば罰を受けることになる(ムヤッサル285頁参照)。 復活の日*に「問われる」ことについては、高壁章8の訳注を参照。
また、大地を得意然として歩いてはならない。本当にあなたは(そのような歩き方で)大地を裂くこともなければ、(その高慢さによって)山々ほどに背高くなることも叶わないだろうから。
それらは皆、その悪が、あなたの主*の御許で厭われることなのだ。¹
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1 「その悪」とは、アーヤ*22から37までの中で示された物事の内、シルク*や親不行、浪費など、悪と定められたこと(アッ=サァディー457頁参照)。またここでの「厭われること」とは法学用語的な意味合いではなく、「禁じられたこと」である、とされる(イブン・ジュザイ1:487参照)。
それらはあなたの主*が、あなたに啓示した英知の一部。そして(人間よ、)アッラー*と共に、外の神¹を設けて(崇めて)はならない。そうすればあなたは咎められ、(あらゆる善から)追いやられつつ、地獄に放り込まれることになる。
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1 「神」については、雌牛章133の訳注を参照。
(シルク*の徒よ、)一体あなた方の主*は、あなた方に男子を特別にお選びになり、(ご自身には)天使*たちを女(娘)として選ばれたというのか?¹本当にあなた方はまさしく、とんでもない言葉を語っている。
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1 マッカ*の不信仰者*たちの一部は天使*をアッラー*の娘とする一方で、自分たち自身には娘でなく息子が授かることを望んでいた(アッ=タバリー6:5175参照)。詳しくは、蜜蜂章57-62とその訳注を参照。
われら*は確かに、彼ら(人々)が教訓を得るべく、このクルアーン*の中で(法規定や譬え、訓戒などを)多彩に示した。それは彼ら(不正*者たち)に対し、(真理から)離れ去ることに拍車をかけるだけなのだが。
(使徒*よ、彼らシルク*の徒に)言うのだ。「もし彼らが言うように、かれ(アッラー*)と共に(別の)神々¹が存在したとしたら、それならば、それらは御座²の主への道を求めた³であろうに」。
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1 「神々」については、雌牛章133の訳注を参照。 2 「御座」については、高壁章54の訳注を参照。 3 一説には、アッラー*以外にも神々がいたとすれば、それらはアッラー*の王権を求め、かれに打ちか勝とうとしたであろう、ということ(信仰者たち章91も参照)。あるいは、それらもまたアッラー*へのお近づきを求めたであろう、という解釈もある(アル=バガウィー3:135参照)
アッラー*に称え*あれ。かれは彼らの言うようなことから遥かに程遠く、高遠なお方。
七層の天と、大地、そこにある(全ての)ものは、かれをこそ称える。そしてありとあらゆるものは、かれの称賛*と共に(かれを)称える*のだ¹。しかし(人々よ)、あなた方はそれらの称揚*を理解しない。本当にかれはもとより、寛大*なお方、赦し深いお方である。
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1 イムラーン家章83とその訳注、雷鳴章15とその訳注、蜜蜂章48-49、巡礼*章18とその訳注、御光章41とその訳注も参照。
(使徒*よ、)あなたがクルアーン*を誦む時、われら*はあなたと、来世を信じない者たちの間に覆い隠す帳を下ろしてやる¹。
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1 彼らは預言者*のクルアーン*の読誦に背を向け、それに無頓着(むとんちゃく)であるがゆえに、あたかも預言者*と彼らの間には覆いがあり、それで彼らは彼を目にしないかのようである(アッ=シャウカーニー3:321参照)。あるいは、それは彼らの不信仰に対する罰としての、無知と心の盲目のことで、彼らの心はクルアーン*を理解し、そこから益を得ることから阻まれた(アル=カースイミー10:3936参照)。
また、彼らがそれ(クルアーン*)を理解できないように、彼らの心に覆いをその耳には重しをかけた¹。そして、あなたがクルアーン*の中であなたの主*お一人を(崇拝*の対象として)言及すると、彼らは嫌がって背を向けるのだ。
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1 「耳に重しをかける」については、家畜章25を参照、また、雌牛章7の訳注も参照。
われら*は、彼らがあなたに耳を傾ける時、そして彼らが密談している時、つまり不正*者たちが、「あなた方は、魔術にかけられ(て正気を失っ)た男に従っているに外ならない」と言う時、彼らが聴いている様子¹を最もよく知っている。
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1 彼らがクルアーン*に耳を傾けたのは導きを得たり、真理を受け入れたりするためではなく、ただクルアーン*の中に落ち度を見つけようとする悪い意図のためだった(アッ=サァディー459頁参照)。
(使徒*よ、)見よ、彼らがあなたに対してどんな譬えを挙げ¹、迷い去ってしまったかを?ゆえに彼らは、(正しい)道に到達することも出来ないのだ。
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1 預言者*ムハンマド*に対する、「魔術にかけられた男」「単なる詩人」「狂人」などという悪口のことである、と言われる(アッ=タバリー6:5181参照)。
また、彼ら(シルク*の徒)は言った。「一体、骨と化し、ばらばらになった後で、本当に私たちがまさしく、新たな創造¹として蘇らされるというのか?」
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1 「新たな創造」については、雷鳴章5の同語の訳注を参照。
(使徒*よ、)言ってやれ。「石にでも、鉄にでもなるがよい。
あるいは、あなた方の心にとって(生命を授かることが)ありえないような、いかなる創造物¹にでも。(それでもアッラー*は、あなた方を蘇らせるのだから)。」すると、彼らは言うであろう。「誰が私たちを、(死後に生き)返らせるというのか?」言ってやれ。「あなた方を、最初に(無から)創成*されたお方が(そうされる)」。すると彼らは、あなたに対して(嘲りながら)頭を振り、(こう)言うであろう。「それ(復活の日*)は、いつのことなのだね?」言ってやるのだ。「すぐかもしれない²」。
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1 「あなた方の心に・・・創造物」とは、一説に天地や山々などのこと。あるいは、石や鉄などよりも、更に生命からは無縁と思われる全てのもの(イブン・ジュザイ1:489参照)。 2 復活の日*の近さについては、蜜蜂章1、預言者*たち章1の訳注も参照。
かれ(アッラー*)があなた方を(墓場から出て来るよう)お呼びになり、あなた方がかれを称賛*しつつ(そのご命令に)応じ、自分たちは(現世で)少しの間しか過ごさなかったと思う¹日。
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1 「(現世で)少ししか過ごさなかったと思う」については、ユーヌス*章45とその訳注、及びター・ハー章103、信仰者たち章113-114、ビサンチン章55、砂丘章35、引き離すもの章46も参照。
(信仰者である)わが僕たちに、よい言葉を語りなさい、と言うがよい。本当にシャイターン*は、彼らの間を(こじれさせるべく)突いてくる¹のだから。本当にシャイターン*は元来、人間にとっての紛れもない敵なのだ。
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1 シャイターン*から「突かれること」に関しては、高壁章200の訳注を参照。
(人々よ、)あなた方の主*は、あなた方のことを最もよくご存知である。かれがお望みならば、あなた方にご慈悲をかけられ、またお望みならば、あなた方をを罰せられる。そして(使徒*よ、)われら*はあなたを、彼らの(諸事の面倒を見る)代理人として遣わしたのではない。
また(使徒*よ)、あなたの主*は諸天と大地にある者を最もよくご存知のお方。そしてわれらは確かに、ある預言者*たちを、別の預言者*たちよりも引き立てた。また、ダーウード*には書巻¹を授けたのだ。
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1 「書巻」については、婦人章163の訳注を参照。
(使徒*よ、シルク*の徒に)言え。「あなた方が、かれ(アッラー*)をよそに(神々¹であると)主張した者たちに、祈ってみるがよい。それらはあなた方から災いを取り除くことも、(それを)移すこと²も出来ない。
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1 「神々」については、雌牛章133の訳注を参照。 2 つまり、災いを別の者に移転させたり、別の状況に変えたりすること(ムヤッサル287頁参照)。
彼らが(アッラー*に並べて)祈っているそれらの者たち¹は(彼ら自身が)、いずれの者が(主*に)一番近いか、と自分たちの主*へのお近づきを求め、そのご慈悲を望み、その懲罰を怖がる者たちなのである。本当にあなたの主*の懲罰はもとより、用心すべきものなのだ。
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1 「それらの者たち」とは、預言者*、正しい者*、天使*たちなどのこと(前掲書、同頁参照)。
われら*はいかなる(不信仰者*の)町も、復活の日*以前に滅亡させるか、あるいは厳しい懲罰で罰せずにはおかないのだ。それはもとより、書(守られし碑板*)の中に記されて(おり、起こるのが運命づけられて)いることなのである。
また、われら*が(、シルク*の徒があなたに要求する)御徴¹をもたらさなかったのは、昔の人々が(いざ、奇跡がもたらされた時に)それを嘘呼ばわりし(、それゆえに懲罰を味わうことになっ)たからに外ならない。われら*はサムード*に、明らかなるもの(奇跡)として雌ラクダを授け、彼らはそれに対して(否定するという)不正*を働いたのだ²。そして、われら*が御徴³(と共に使徒*たち)を送るのは、(人々を戒めるべく)怖がらせるために外ならないのである。
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1 この「御徴」とは、奇跡のこと(前掲書288頁参照)。彼らは、真の預言者*なのであれば奇跡を起こしてみよ、と要求したものだった。アーヤ*90-93、雌牛章108、家畜章109-110、ユーヌス*章97、ター・ハー章133、預言者*たち章5、識別章7-8、創成者*章42なども参照。 2 サムード*と雌ラクダの逸話については、高壁章73とその訳注、フード*章64-68、詩人たち章155-157、月章27-29、太陽章13-14も参照。 3 この「御徴」は、奇跡や教示などのこと(ムヤッサル288頁参照)。
(使徒*よ、)われら*があなたに、「本当にあなたの主*は、人々を(その知識と御力によって)包囲された¹」と言った時のこと(を思い起こさせよ)。また、われら*があなたに見せた光景は、人々への試練以外の何ものでもなかったし²、クルアーン*の中の呪われた木³も(、そうなのである)。われら*は彼らを、(懲罰や御徴の数々で)怖がらせる。そして、それは彼らに対し、(不信仰と迷いという)ひどい放埓さに拍車をかけるだけなのだ。
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1 アッラー*は預言者*ムハンマド*に対して悪を望む者から、彼をお守りくださる。不信仰者*らはアッラー*のご意思と定めから、反することは出来ない(アッ=タバリー7:5199参照)。 2 この「光景」とは、預言者*が夜の旅と昇天において目にした、驚くべき光景の数々のこと(ムヤッサル288頁参照)。そして、この「試練」により、ある人々はその出来事を信じることが出来ず棄教(ききょう)したが、別の者たちは逆に堅固さと確信を得た(イブン・カスィール5:92参照)。 3 「呪われた木」とは、ザックームの木のこと。水ではなく地獄の炎によって生きる木で、地獄の民の食べ物。「無理やり飲み込む」という意味の「タザックム」が語源であるとされるように、その実は忌まわしく、悪臭を放つのだという。「ザックーム」が一方言で「ナツメヤシの実とバター」を指したことから、マッカ*の不信仰者*らは「アッラー*よ、私たちの家にそれをお増やし下さい」と言ったり、あるいは「火は木を燃やすというのに、地獄に木などあるはずがない」などと笑ったりした(アル=クルトゥビー15:85参照)。整列者章62-66、煙霧章43-46、出来事章52-53も参照。
(使徒*よ、)われら*が天使*たちに「アーダム*にサジダ*せよ」と言い、そして彼らがサジダ*した時のこと(を思い起こさせよ)¹。しかし、イブリース*だけは別だった。彼は(不遜にも、こう)申し上げたのだ。「一体、あなたが泥土から創られたもの²に、私がサジダ*するというのですか?」
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1 この出来事の詳細に関しては、雌牛章34-39、高壁章11-25、アル=ヒジュル章28-42、ター・ハー章116-123、サード章71-83なども参照。また、ここでのサジダ*については、雌牛章34の訳注を参照。 2 アーダム*が土から階段を経(へ)て創られたことについては、アル=ヒジュル章26の訳注を参照。
彼(イブリース*)は、(アッラー*に)申し上げた。「仰って下さい。これが、あなたが私よりもお引き立てになった者です(が、その訳は何ですか)。もしもあなたが、私に復活の日*まで猶予を授けて下さったなら、私は(精選された)僅かな者たち¹を除き、必ずやその子孫を(誘惑と腐敗*によって)思い通りにしてみせましょう」。
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1 この「僅かな者たち」については、ユーヌス*章24「精選された僕」の訳注を参照。
かれは仰せられた。「(イブリース*よ、)行くがよい¹。そして彼ら(アーダム*の子孫)の内、あなたに従う者があれば、地獄こそが、あなた方へのふんだんなる報いとなろう。
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1 これらの言葉は、イブリース*とその追随者への警告的意味合いによるもの(ムヤッサル288頁参照)。また、イブリース*の申し出が受け入れられたことについては、高壁章15の訳注を参照。
彼らの内、出来る限りの者を、あなたの声によって(罪へと)扇動し、あなたの騎兵と歩兵を彼らに対して結集させ、財産と子供たちにおいて彼らの分け前に与かり¹、彼らに(偽りの)約束をせよ」。シャイターン*が彼らに約束することは、欺き以外の何ものでもないのだが。
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1 シャイターン*は人の財産において、アッラー*以外のものに犠牲を捧げたりすることや、合法な家畜を勝手に非合法とすることなど、非合法な目的・手段による出費や収入へと招く。また子供に関しては、姦淫(かんいん)や嬰児(えいじ)殺しなどの罪を飾り立てる(アッ=タバリー7:5213参照)。
本当に(精選された信仰者である)わが僕たち¹はといえば、あなたには彼ら(を誘惑すること)に対して、いかなる力²もない。そして(預言者*よ、)あなたの主*だけで、(信仰者をシャイターン*から守ってくれる)委任者³は十分なのだ。
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1 この「わが僕たち」については、ユーヌス*章24「精選された僕」の訳注を参照。 2 あるいは「根拠」という意味(アッ=タバリー7:5213参照)。 3 この「委任者」については、頻出名・用語解説の「全てを請け負われる*お方」の項を参照。
(人々よ、)あなた方の主*は、あなた方がかれの恩寵を求めるべく、あなた方のために船を海に歩ませるお方。本当にかれはもとより、あなた方に慈愛深い*お方なのだ。
そして、海であなた方に災難が降りかかれば、あなた方が祈っているものたちは、かれ(アッラー*)を除いて(あなた方の脳裏から)消え失せてしまう。(あなた方はその時、アッラー*だけに救いを求めるが、)かれがあなた方を陸上に救い上げられると、あなた方は(信仰と誠実さ、正しい行い*から)背を向けてしまう。人間とはそもそも、恩知らずなもの。
(人々よ、)一体、あなた方は、かれがあなた方を陸の一辺¹もろとも沈めてしまったり、あるいはあなた方に石を降らす風を送ったりし(て罰せられ)ないと、安心しているのか?その後、あなた方は自分たちに、(あなた方を守ってくれる)いかなる委任者も見出さないのだ。
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1 一説には海岸のこと。アッラー*がお望みなら、彼らが海の危険から逃れて上陸した直後に、陸の危険が襲いかかることもあり得る(イブン・アーシュール15:162参照)。
いや、一体あなた方は、かれが自分たちをもう一度そこ(海)へ戻し、自分たちに暴風を送り、自らの不信仰ゆえに自分たちを溺れさせないと安心しているのか?その後、あなた方はそのことで、われら*に対する自分たちの後見人¹を見出すこともないのだ。
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1 彼らへの援助者、彼らの復讐(ふくしゅう)を要求する「後見人」のこと。あるいは、アッラー*のされたことを否認し、かれを追求する者(アル=バガウィー3:144参照)。
われら*は確かに、アーダム*の子らに栄誉を授け、彼らを陸に海に運んだ。そして彼らに善き糧から授け、われら*が創造した多くのものよりも、彼らを大いに引き立てたのだ。
われら*が全ての人々を、その導き手¹と共に召喚する(、復活の)日*(のことを思い出させよ)。そして自分の帳簿を右手に渡された者、それらの者たちは自分たちの帳簿を(喜々として)読むこととなり²、糸くず³ほどさえも不正*に扱われることがない。
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1 この「導き手」の解釈には、「預言者*」「啓典」「現世での行いが記された帳簿」などの説がある(アッ=タバリー7:5217-5219参照)。 2 行いの帳簿を右手に渡されることは、彼が正しく導かれ、悪行よりも善行が優ったことの印である(アッ=サァディー463頁参照)。 また、この時の様子についてはアーヤ*13-14とその訳注、洞窟章49、真実章19-25、割れる章7以降なども参照。 3 「糸くず」については、婦人章49の訳注を参照。
また、ここ(現世)で盲目だった者は、来世においても盲目¹であり、更に道に迷う者なのだ。
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1 現世において、アッラー*の御力を示す証拠に盲目であり、預言者*ムハンマドの伝えた教えを信じなかった者は、復活の日*、天国への道を歩むことにおいて更に盲目である(ムヤッサル289頁参照)。 家畜章50、雷鳴章16、フード*章20,24とその訳注も参照。
(使徒*よ、)本当に彼ら(シルク*の徒)は、あなたにそれ(クルアーン*)以外のものをわれら*に対してでっち上げさせるべく¹、われら*があなたに下したもの(クルアーン*)から、あなたを惑わせて遠ざけてしまうところであった。そうすれば彼らは、あなたを親友としたであろう。
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1 フード*章12の訳注も参照。
そして、もしわれら*があなたを(真理において)確固とさせなければ、あなたは確かに僅かながらも、彼ら(の提案)に靡いてしまうところであった。
(使徒*よ、もしあなたが彼らに少しでも靡いていた)ならば、われら*はあなたに倍の生と倍の死¹を味わわせたのであり、それからあなたは自分自身に、われら*に対するいかなる援助者も見出すことはなかったのだ。
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1 つまり現世でも来世でも、倍の懲罰を味わうことになるということ(アッ=タバリー7:5223参照)。
また、本当に彼ら(不信仰者*ら)はあなたを追放するべく、あなたを実に煩わせて、その地(マッカ*)から出て行かせるところであった。そして、そうしたとしても彼らは、あなたの(出て行った)後、僅かばかり(の間)しか(そこに)留まることがないのである¹。
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1 一説には、バドルの戦い*のこと。ムスリム*たちがマッカ*からマディーナ*に移住*した後、マッカ*の不信仰者*がバドルで大敗するまで、一年半しかなかった(イブン・カスィール5:101参照)。
(それは、)われら*の使徒*たちの内、われら*が確かに、あなた以前に遣わした者たちの摂理¹。そして(使徒*よ、)あなたはわれら*の摂理に、いかなる変更も見出すことがない。
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1 「使徒*たちの摂理」とは、使徒*を自分たちの間から追放した社会が滅ぼされる、という摂理のこと(ムヤッサル290頁参照)。
太陽が傾いてから、夜の闇(が包みこむ時)まで、礼拝を遵守*せよ。そして暁のクルアーン*¹を(遵守するのだ)。本当に暁のクルアーン*は、(天使*たちに)立ち会われるものなのだから。
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1 これは一説に、夜明け前の義務の礼拝のこと。そこには、夜の天使*たちと昼の天使*たちが集合するとされる(アル=ブハーリー648、雷鳴章11「交替番」の訳注を参照)。尚、この直前に言及されている「礼拝」は正午過ぎから夜までに定められた、四つの義務の礼拝であると言われる(ムヤッサル290頁参照)。これら一日五回の義務の礼拝は、預言者*が昇天した際に定められた(アル=ブハーリー3887参照)。
また(預言者*よ)、夜の一部をあなた(の高い位)への善き上乗せとして、それ(クルアーン*)をもってタハッジュド¹せよ。あなたの主*は、あなたを栄誉ある場所²に蘇らせて下さるだろうから。
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1 夜に一度眠った後起きて、暁の前までに行う礼拝のこと(アッ=タバリー7:5234参照)。語源的には、「眠りを振り払うべく努力する」という意味合いがある(イブン・アーシュール15:185参照)その義務性については、衣を纏(まと)う者章2とその訳注も参照。 2 預言者*ムハンマド*は復活の日*、最大の執り成し手となるほか、誰も授かることの出来ない数多くの栄誉や、特別な役目を授かる(イブン・カスィール5:104参照)。
また、言うのだ。「我が主*よ、私を善い入り所から入れ、私を善い出口から出して下さい¹。そしてあなたの御許から私に、(私に反対する者に対する、我が)助力となる論拠²をお授け下さい」。
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1 「善い入り所」と「善い出口」の解釈には、前者と後者がそれぞれ「死、復活」「(アッラー*からの)ご命令(への服従)、禁止(の回避)」「(安全な避難先としての)マディーナ*、(シルク*の徒の支配下にあった)マッカ*」といった諸説があるが、アーヤ*の意味はその全てを包括するものである(アル=クルトゥビー10:312-313参照)。 2 一説には、「偉力と勝利」(前掲書10:313参照)。
そして(使徒*よ、シルク*の徒に)、言うがよい。「真理は到来し、虚妄は消滅した¹。本当に虚妄は、消滅することになっているのだから」。
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1 この「真理」はイスラーム*、「虚妄」はシルク*のこと(ムヤッサル290頁参照)。
われら*はクルアーン*から、信仰者たちへの癒し¹と慈悲であるものを下す。それは(それを嘘つき呼ばわりして信じない)不正*者たちに、(不信仰と迷いという)損失しか上乗せしないのだが。
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1 この「癒し」については、ユーヌス*章57の訳注を参照。
また、われら*が人間に恩恵を授ければ、彼は(アッラー*の想念を)拒み、そっぽを向いて遠ざかる。そして自分に悪が降りかかると、失意の念激しい者となるのだ。
(使徒*よ、)言え。「(あなた方は)皆、自分に合ったやり方で行うのであり、あなた方の主*は、誰こそが最も(正しい)道に導かれている者なのか、一番よくご存知なのである」。
彼ら(不信仰者*たち)は、魂についてあなたに尋ねる。言ってやれ。「魂は、我が主*(だけがご存知)の事。あなた方は、僅かばかりしか知識を与えられてはいない」。
また、もしわれら*が望むなら、われら*はあなたに啓示したもの(クルアーン*)を(あなたの心から、)まさに消し去ってしまおう。それからあなたはそこにおいて、われらに対して(それを阻む、)自らの委任者を見出さないのである。
しかし、あなたの主*からのご慈悲ゆえ(、かれはクルアーン*を、あなたの心に堅固にし給う)。本当に、かれのあなたに対するご恩寵は、もとより偉大なのだから。
言ってやれ。「もしも、このクルアーン*と同様のものを創作すべく、人間とジン*が集結したとしても、それと同様のものを作ることは断じて叶わない。たとえ彼らがお互いに力を合わせても、である」。¹
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1 創造物によるクルアーン*の創作については、雌牛章23の訳注を参照。
われら*は確かにこのクルアーン*の中で、人々に対し、(教訓を受けるべき)あらゆる譬えを多彩に示した。そして大半の人々は、(真理への)否定以外を拒んだのだ。
(クルアーン*の真実性に太刀打ちできないと知ると、)彼ら(シルク*の徒)は言った¹。「(ムハンマド*よ、)あなたがその地(マッカ*)から、私たちに噴泉を湧かせるまで、私たちはあなたのことを信じまい。
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1 マッカ*の不信仰者*たちは、預言者*ムハンマド*に様々な無理難題を突きつけた。家畜章57-58、戦利品*章32、ユーヌス*章50、フード*章8、雷鳴章6、巡礼*章47、蜘蛛章53-54、サード章16、相談章18、階段章1-2なども参照。
または、あなたにナツメヤシと葡萄からなる農園が現れ、あなたがその間から河川を勢いよく迸らせるまでは。
あるいは、あなたが主張しているように、天をいくつもの破片にして私たちの上に落下させる¹か、あなたがアッラー*と天使*たちを眼前に連れて来る²までは。
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1 復活の日*に天は脆(もろ)くなって割れ、その片々が落下する、とあなたは約束したが、一足早く、現世でそれが起こるようにしてみよ、ということ(イブン・カスィール5:120参照)。山章44とその訳注も参照。 2 家畜章8-9、111、アル=ヒジュル章7-8、識別章7も参照。
それとも、あなたに金の邸宅が現れるか、あなたが天に昇るまでは。そして私たちが読む書¹を(、天から戻って来て)私たちに下すまでは、あなたが昇天したことなど、信じはしまい」。(使徒*よ、)言ってやれ。「我が主*に称え*あれ!」私は、使徒*である一介の人間に過ぎないのではないか?」
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1 ムハンマド*は真にアッラー*の使徒*である、と記された書のこと(ムヤッサル291頁参照)。
(不信仰な)人々が、自分たちのもとに導きが到来した時に(アッラー*とその使徒*を)信仰するのを阻んだのは、「アッラー*が人間の使徒*を遣わされただと?」と、彼らが言ったこと¹に外ならなかった。
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1 つまり、このような言葉を発する原因となる、あらゆる信条や考えのこと(アブー・アッ=サウード5:195参照)。
(使徒*よ、)言ってやれ。「(アッラー*はこう仰せられる)。もし地上に安住して(そこを)歩く天使*たちがいたならば、われら*は天から彼らのもとに、天使*の使徒*を遣わしたであろう」。¹
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1 しかし地上の住人は人間であることから、彼らと同種である人間の使徒*が彼らに遣わされたのである(ムヤッサル291頁参照)。家畜章8-9,111、アル=ヒジュル章7-8、識別章7も参照。
言うがよい。「(私が本当に預言者*であることの、)私とあなた方の間の証人は、アッラー*のみで十分。本当にかれは、その僕たちに通暁されるお方、全てをご覧になるお方であられる」。
誰であろうと、アッラー*がお導きになる者こそは、(真実へと)導かれた者。そして、かれが迷わされる者が誰であろうと、あなたは彼らに対し、かれ(アッラー*)以外のいかなる庇護者も見出すまい。われら*は復活の日*、彼らを顔を下にした逆様の状態にし¹、盲目で、唖で、聾の状態のまま召集する²。彼らの住処は地獄。それ(地獄の炎)が収まるたび、われら*は彼らに烈火を上乗せする³のだ。
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1 預言者*は仰(おっしゃ)った。「一体、彼(人)を現世において両足である枷られたお方が、復活の日*、彼を顔で歩かせられることが出来ないなどということがあろうか?(いや、お出来になるのである。)」(アル=ブハーリー4760参照)。 2 洞窟章53、識別章12-13などにもあるように、クルアーン*の複数の個所で、復活の日*に不信仰者*が見、聞き、話す描写が登場する。これについては、「彼らが喜ぶようなものを見たり、根拠のあることを話したり、うれしいことを耳にしたりすることがない」「これは召集される時の、一時的な状態である」などといった解釈がある(アッ=タバリー7:5263参照)。 3 これは婦人章56にあるような光景のことを指している、とも言われる(アル=バガウィー3:164参照)。
それが彼らの応報。というのも彼らは、われら*の御徴を否定し、「一体、骨と化し、ばらばらになった後で、本当に私たちがまさしく、新たな創造¹として蘇らせれるというのか?」と言っていたからなのだ。
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1 「新たな創造」については、雷鳴章5の同語の訳注を参照。
一体、彼ら(シルク*の徒)は、諸天と大地を創造されたアッラー*が、(彼らの滅亡後、)彼らと同様の者をお創りになることがお出来なのを知らなかったのか?またかれは、彼らに対して疑惑の余地のない期限¹を設けられたのである。そして不正*者たちは、(アッラー*の教えの)否定以外を、拒んだのだ。
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1 この「期限」とは、彼らが死んだり、懲罰にあったりするまでの期限のこと(ムヤッサル292頁参照)。
(使徒*よ、)言ってやるがいい。「もし、あなた方が我が主*のご慈悲の宝庫¹を所有していたとしても、出費(ゆえのお貧困)を恐れて出し惜しみしたであろう。人間とは元来、守銭奴なのだから」。
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1 「ご慈悲の宝庫」とは、糧の宝庫、あるいは恩恵の宝庫のこと(アル=クルトゥビー10:335参照)。
われら*は確かにムーサー*に、明らかなる九つの御徴¹を授けた。ならば(使徒*よ、)イスラーイールの子ら*に、彼(ムーサー*)が彼ら(の先祖)のもとに(御徴を携えて)到来し、フィルアウン*が彼(ムーサー*)に対して、「本当に私はまさしくーームーサー*よーー、あなたが魔術にかけられ(て正気を失っ)た者だと思うのだ」と言った時のことを、尋ねてみよ。
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1 「九つの御殿」とは、一説に、杖、手、旱魃(かんばつ)、凶作、洪水、イナゴ、虱(しらみ)、蛙(かえる)、血のこと(ムヤッサル292頁参照)。高壁章107-108、130,133も参照。
彼(ムーサー*)は、言った。「これらのもの(九つの御徴)を開眼として下した¹のは、諸天と大地の主*以外の何ものでもないということを、あなたは確かにご存知です。そして、本当に私はまさしくーーフィルアウン*よーー、あなたが破滅する者であると確信しています」。
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1 つまり、アッラーの唯一性*を示す証拠として下した、ということ(ムヤッサル292頁参照) 。
それで彼(フィルアウン*)は、彼ら(イスラーイールの子ら*)を煩わせて、(ムーサー*と共に)その地(エジプト)から追い出すことを望んだ。そしてわれら*は、彼(フィルアウン*)と彼と共にあった者全員¹を(海で)溺れさせた。
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1 フィルアウン*の軍勢のこと(前掲書、同頁参照)。
また、われら*はその(出来事の)後、イスラーイールの子ら*に言った。「その地¹に住むがよい。そして来世の約束(復活の日*)が到来したら、われら*はあなた方を皆、一緒くたにして(清算の場に)連れ出すのだ」。
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1 「その地」とは、シャーム地方(現在のシリア、パレスチナ周辺地域)のこととされる(ムヤッサル292頁参照)。
われら*は、真理と共にそれ(クルアーン*)を下し、それは真理と共に下った¹。そして(使徒*よ)、われら*があなたを遣わしたのは、吉報を伝え、警告を告げる者¹としてに外ならない。
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1 クルアーン*は人々への命令、禁止、褒美、懲罰のために下され、また、真実と正義、改変からの保護と共に下った(前掲書、293頁参照)。 2 「吉報を伝え、警告を告げる」については、雌牛章119の訳注を参照。
また(使徒*よ、われら*は)クルアーン*を(、あなたに下した)。われら*はそれを、あなたが人々に対してゆっくり誦むように明確に分け¹、徐々に下した²のだ。
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1 つまりクルアーン*を明快なもの、完全案者とし、導きと迷妄(めいもう)、真理と虚妄(きょもう)をはっきりと分けるものとした、ということ(ムヤッサル293頁参照)。 2 クルアーン*は明白かつ詳細にされ、完全なものとして仕上げられた。また一度に全部下されたのではなく二十三年(他説もあり)という年月をかけて、折々の出来事や状況に応じて徐々に下された(イブン・カスィール5:127、ムヤッサル293頁参照)。識別章32とその訳注も参照。
(使徒*よ、クルアーン*を嘘つき呼ばわりする者たちに、)言うのだ。「それを信じよ。あるいは、信じなくてもよい(、いずれにせよ、それは変わらず真理なのだから)」。本当にそれ(クルアーン*)の啓示)以前に知識(啓典)を授けられた者たちは、それ(クルアーン*)が彼らに読誦されれば、顔¹を伏せつつ崩れ落ちてサジダ*する²のだ。
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1 字義的には「あご」のこと。顔を深々と地面につける意味合いが含まれている(イブン・アーシュール15:234参照)。 2 これは啓典の民*の内、クルアーン*を信じてイスラーム*を受け入れた信仰者たちの描写とされる(アル=バガウィー3:167参照)。
そして彼らは、(こう)言うのである。「我らが主*に称え*あれ。本当に我らが主*のお約束は、まさしく実現されることになっていたのだ」。
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1 クルアーン*を下し、預言者*ムハンマド*を遣わすという、彼らの啓典に示された「お約束」のこと(アル=ワーヒディー13:508参照)。
そして、顔を伏せつつ泣きながら崩れ落ち、(クルアーン*を聴くことは、)彼らに更なる恭順さ¹を上乗せする。(読誦のサジダ*)
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1 「恭順さ」については、雌牛章45の訳注を参照。
(使徒*よ、シルク*の徒に)言うがよい。「アッラー*に祈るがよい。あるいは、慈悲あまねき*お方に祈ってもよい。(かれの美名の内の)いずれで呼ぼうと、最も美しい御名はかれにのみ属するのであ(り、かれは唯一なのであ)る¹。そしてあなたの礼拝を声高にせず、低くもせず、その中間の道を求めよ²」。
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1 一説にこのアーヤ*は、預言者*がアッラー*を、「慈悲あまねき*お方」「慈愛深き*お方」と異なる美名で呼びつつ祈っていたのを耳にした不信仰者*が、彼が複数の神に祈っているのだと誤解したことに関して下った(アッ=タバリー7:5279参照)。雷鳴章30とその訳注、預言者*たち章36、識別章60も参照。 2 一説にこのアーヤ*は、預言者*とその教友*たちがマッカ*で密かに礼拝していた時に下った。礼拝でクルアーン*読誦の声を上げれば、それを耳にした不信仰者*らがその悪口を言い、声を低めすぎれば、礼拝に参加する者たちに聞こえないという状況を避けるため、このようなご命令が下ったのだとういう(アル=ブハーリー4722参照)。また別の説では、ここでの「礼拝」は「祈願」のこと(前掲書4723参照)。
また(使徒*よ)、言うのだ。「子供を持たず、王権においていかなる同位者もなく、屈辱ゆえのいかなる庇護者¹もないアッラー*に、称賛*あれ」。そして、アッラー*の偉大さを称揚*するのだ。
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1 屈辱から守ってくれる庇護者や、援助者など必要としない、ということ。つまり、かれは屈辱などからは無縁のお方である(アル=クルトゥビー10:345参照)。
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